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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード



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2004/11/05(金)

『街男 街女』1週間目の感想

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太郎と貴男

自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間

街男 街女』を買った同じ日、岡本太郎の『自分の中に毒を持て』も買った。本屋を冷やかしていたらたまたま見つけたので買ってみた。ファンならご存知の通り、前々作『ムーンストーン』と前作『踊る太陽』の間に田島が出会い、絶賛し続けている本だ。彼の音楽への影響は非常に大きい。滑稽すぎるほどに。

http://www.originallove.com/WebSite/voice.html 2002.7.25付参照

この直後にシングル「恋の彗星」を書き、そこから『踊る太陽』を作っていった、というのが前作の製作過程。

さて、2年遅れで実際にこの本を読んでみた。たしかにすごい。力強く重量級のフレーズで溢れ返っている。田島はこの本のほとんどに線を引いてしまっているそうだ。

http://www.1101.com/taro/idenshi/2003-12-09.html

この本に線を引きまくってしまう田島貴男は、本当にそういう生き方をしてきた人なんだろう。なぜなら、岡本太郎の言うことはあまりに理想論のようで*1、そこに線を引くほど共感できるということは、実際に同じことを考えてきたのだとしか思えない。自分の場合は、そのフレーズを「理解」することはできるが、とても「共感」というレヴェルにまではいかなかった。*2

太郎への背信?

この太郎の著作は、当然のように『街男 街女』へも多大な影響を与えたのだろうか?

「今までの自分なんか蹴トバしてやる」「芸術はきれいであってはいけない」「自分を笑え」「不器用だからこそ美しい」。こんな太郎のフレーズを、アルバムを聴いた方ならサウンドとして実感できるだろう。調子はずれスレスレ、絶叫気味のヴォーカル、ひずんだギター、コテコテのサウンドなどなど。

ところが、ここにちょっとした違和感が残る。まるで、太郎が「こうすべきだ」と書いてあるとおりに、田島はエネルギーを発散しているようではないか?

このアルバムにものすごくイジワルな見方をするならば、サウンドクリエイションの点から特に新鮮味があるわけではないし、過去の作品で聴いたようなフレーズも多く(ビートルズ色も妙に濃いと思う)、行き過ぎたねっちょり声はときに滑稽でさえあり、いまどき昭和歌謡もないだろうという微妙な時代錯誤もある。まさか、それらの免罪符のための岡本太郎なのか? そもそも、他人の権威に拠りかかった振舞いなんて、それこそ、太郎への重大な背徳なのではないか?

だが大丈夫、そうではないのだ。その反証が、「夜の宙返り」と「鍵、イリュージョン」のアルバム最後の2曲だ。(この2曲の重要性に直感したことは、id:keyillusion:20041027#p9にも書いた)

美しく切ないこの2曲は、表面的にはそれこそ、これまでどおりの無難なオリジナル・ラヴであるように聴こえる。先の「太郎的」なものからも、最も遠いように聴こえる。しかしこの2曲には、それまでの8曲とぜんぜん違うものを感じる。そこまでの8曲は、どこか太郎のイメージを借りた絵空事のような曲だったのに対して、ラスト2曲は、生身の田島貴男が音楽の向こうに浮かび上がってくる。ものすごく「リアル」な感覚があるのだ。

このアルバムの主題

鍵、イリュージョン」に関しては、インタヴュアーもなぜかズレたことを言っている。『Barfout!』では山崎二郎氏が<誰にも渡しちゃいけないものが君の中にもあるんじゃないか>、『MARQUEE』ではMMMatsumoto氏が<気持ちがあるなら、自分が歩いた旅の先に奇跡がある>を言及。共にサビのフレーズだ。

自分は両氏のインタヴューをいつも楽しみにしていて、いつもいいインタヴューをするなぁと感心しきりなのだが、今回は初めてイタダケナイと思った。だって、そんな抽象的な物言いがこの曲、ひいてはこのアルバムの主題であるはずがない。それらはフレーズとして格好がいいからサビになっているのにすぎない。*3

本当の主題は、何度聴いても「最後の二行」以外にありえない。こんなに力強く、悲壮感さえも溢れるフレーズがあるじゃないか! ここの二行を聴くと、田島の「生(せい)」がブワーッと自分の感覚を覆い尽くしていく。その感覚は、「やっぱり愛だよね」なんて詞面だけの単純な共感じゃなくて、田島の現存在がこちらの方へもはみ出してくるほど強烈なものだ。これこそ芸術。(そう呼ばなければ、芸術っていったいなんなのだろう?) この感覚、かつては小沢健二の「天使たちのシーン」でも感じたものに近い、といえばわかる人にはわかってもらえるだろうか。

田島は、最後の2曲で「太郎的」なことをしないことで太郎に打ち克ち、しかも太郎がもっとも強調していた「芸術=人間」ということを実践してしまったのだ。

新装開店とは

今度のアルバムを「新装開店オリジナル・ラヴ」と田島は言う。それは「築地オーライ」にはじまる、表面的に太郎チックな音楽のことではないと思う。それは次の次のアルバムのころにはもう跡形もないだろう。そんな他から照らされて表面だけが明るい音楽ではなくて、それ自体で光り輝くような音楽。田島貴男という一人物の「生」で溢れまくる音楽、それこそがオリジナル・ラヴの新しい境地だ……と、この2曲が「突然変異」的に発生した曲でないことを祈って、そう思う。

*

田島貴男の濃いキャラクターが頭をよぎり、「そんな現存在はおことわり」と思った人もいるかもしれないけど(笑)、良質な音楽だけが持つ表現力がこのアルバムにはあると思う。「わかる人にだけわかる」アルバムではないと思う。一人でも多く、このアルバムを聴いてほしい。*4

街男 街女

街男 街女

*1:それを実際にやっているのだからすごいのだが。

*2:自分は、岡本太郎に「ばかやろう!」と一括されてしまうタイプの人間なのだろう。ただし、ある1章だけは「YES!!!」と非常に共感できた。

*3:現に『MARQUEE』では田島の言葉で「なんかね、『そのフレーズいいなぁ』と思って」とある。

*4:最高傑作なの?と言われれば、実はそうは思っていない。6メートルの棒高跳びを10cmくらい余裕を持って飛びきったブブカみたいな感じ。