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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード



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2007/06/05(火)

 その7『踊る太陽』

|  その7『踊る太陽』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  その7『踊る太陽』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの7回目。『ビッグクランチ』の予定だったのですが、まったく収拾が付かなくなってしまった(3回シリーズになりそうになっている…)ので、気晴らしに『踊る太陽』を先にやってみました。

「田島中毒」のアンケート対象の1枚でもありました。自分は「どちらかというと苦手なアルバム」と回答しました。どのくらい「苦手」だっけかなぁ…と確認する意味で聴いてみたら、いろいろと書きたいことが湧いてきました。

ここを読んでいる方はほとんどアンケートも回答されていると思いますが、あちらの方でこのアルバムについて語り足りない方がいたら、コメントいただけると嬉しいです。

おことわり

オリジナル・ラヴ マイランキングの各アルバム版です。アルバム全体印象は、そちらを参照してください。

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

踊る太陽

踊る太陽


発売前

ムーンストーン』のころにラジオ番組「バースト」が終わり、田島に関する最新情報は、オフィシャルサイトの「Voice」とファンクラブ会報のみという、なんとも心許ない状態になってしまった。入ってくるのは、「ボクシングをはじめた」「岡本太郎にハマっている」という断片的な情報と、2曲のシングルのみ。それも「やっとラヴソングが書けるようになってきた」などという妙な一言の割には、当たり障りのない楽曲を出してきたりで、田島がどういう方向へ進もうとしているのかまったくわからない状態だった。個人的には『DESIRE』のころのような五里霧中の感じがしていた。

それで気分的に盛り上がらなくて、実はアルバム発売当日に買わなかったアルバムだった。(3日経ってからようやく買った)

1.ブギー4回戦ボーイ

ボクシングに熱中していたものがそのまんまタイトルとなって現れた曲。

「4回戦ボーイ」とは、プロテストに合格しただけのC級ライセンスのボクサーのことである。このクラスの試合は4ラウンドしかないので、4回戦なのだそうだ。

また、「マイナスに懸けてみるんだ」という歌詞に象徴されるように、岡本太郎の影響を最も受けた曲でもある。岡本敏子もこの歌詞を読んで微笑ましく笑っていた。

この時期はT-REXくらいしか聞いていなかったと言っていただけに、重いギターが刻まれるコミカルな曲。重量級なのにコミカルというのが、1曲目としてははじめての試み。

ムーンストーン』が「軽み」のアルバムだっただけに、その対極を行くようなオープニングにはそれなりに納得がいって、はじめて聞いたときから好きな曲。

2.ふられた気持ち

またもブギー調のコミカルソング。1曲目を電気増幅させたような「おバカ」な曲で、このアルバムの中でもとくに好きな曲。「後期LED ZEPPELINみたいだ」という感想を読んだことがあるが、ブワブワっとした肥大感はたしかにそうかもしれない。

喉も張り裂けんばかりにシャウトしまくっている。いつもヴォーカルのレコーディング時はカーテンを閉めた部屋で篭もるようにしているそうなのだが、この曲は木暮晋也のアドヴァイスでカーテン全開で収録したのだそうだ。その勢いがそのまま溢れ出ている。

3.恋の彗星

プロモーションヴィデオでは、サビの部分(Carry on~)のところで電飾がバーっと光るあたりが完全に笑いどころのツボに入っている。「夢から覚めた机 頬が痛い」などのコミカルな歌詞もあるし、前2曲のコミカルさをうまく引き継げているはずなのだが、曲だけで聞いてしまうと、やっぱりシングル狙いのお上品な曲になってしまっているのが残念なところ。「Winter's Tale」みたいなリズムキープは格好いいんだけど、名曲というより、「どこかで聞いた」感が強くもある。

ムーンストーン』の後に出された新曲第1弾。まだアルバムの作成に入る前。アルバム全体の指標になった曲でもある。ボクシングにハマっているとカミングアウトしたあとの1曲目でもあり、ジャケットでファイティングポーズを取っていたことと、顔がスリムになっていたことの2点が衝撃的だった(笑)。

恋の彗星

この曲のプロモーション時、「やっとラヴソングが書けるようになった」としきりに言っていた。ファンならずとも「ええっ!?」と思うのも当然で、ラジオ出演時にはパーソナリティに相当つっこまれていた。

フジテレビ系「金曜エンタテイメント」オープニング・テーマで、サビが「フライデーナーイト」に変わっていたらしい。

4.Hey Space Baby!

またもやコミカルソング(笑)。というか、オリジナル・ラヴの中でも五指に入る珍曲のひとつだろう。

なんで宇宙のカウボーイなんだ!? タマネギ作るのかよっ!?とツッコミどころ満載の歌詞なのだが、そこは大笑いすればいいだけのところだろう。真に受けて引いてしまっては、松本隆の思う壺だ。

この曲の松本隆の仕事ぶりには、ほとほと感心する。田島にとって正気とは思えないドドンパ的なメロディに歌詞を載せるだけでも大変だろうに、たった4分の中で宇宙を舞台にした一大スペースオペラを構築しているなんて、さすが作詞のプロだなと思わずにいられない。「イエロー・サブマリン音頭」っぽくしてください、という田島のリクエストでもあったのだろうか?

5.美貌の罠

唐突にシリアス路線。この曲だけ、このアルバムの中で浮きまくっている。

美貌の罠

初めての、アルバムと同時リリースのシングル。アルバム『踊る太陽』に関してはほとんど予備知識を持っていなくて、まずはとりあえずこのシングルから聞き始めたのだが、ダンサブルでアダルトなムードを持つあまりの格好よさに、アルバムへの期待感が150%増えたのを覚えている。…ま、そうしていざアルバムを聞いたら「ブギー」だったから拍子抜けしたわけなんだけど。ともあれ、田島がまだこういう曲も書けることを確認できて、心底ほっとしたものだった。

曲はもとより、バックメンバーが豪華。リズム隊が、ブレッカー・ブラザーズなどにも参加したウィル・リーとクリス・パーカー。さらに矢野顕子のジャジーなピアノも聴くことができる。これで格好よくないわけがない。アルバムヴァージョンでのみ聞ける、ラティール・シーのパーカッションソロも素晴らしい。

松井五郎による歌詞は、かなり書き直しがあったらしい。最初に出されたものは「オネエ言葉」すぎて、さすがにカンベンしてもらったとか。

クイズ ポーカーフェイス」という番組のタイアップ。回答者よりも司会者の方が可笑しい変なクイズ番組だった。スイナチッタ。番組ではエンディングにサビの部分が使われていたが、サビだけでは意外とインパクトを感じられない曲である。

シングルのカップリングの「ソウル・タトゥー」も素晴らしい。鈴木雅之に提供したもののセルフカヴァーだが、どこをどう聞いても田島ソウルの1級品。あれがアルバムに入っていたら、また印象が大きく違ったと思うのだが、なぜかそうはしなかった。田島はこのアルバムをシリアス方面には持って行きたくなかったのだろうか?

6.のすたるぢや

田島にとってはじめてか、ヨナ抜き和風メロディライン。アルバム10枚出しても、まだ新境地ってあるものだ。

田島の場合、はじめてピアノだけで作曲したという「ショウマン」もそうなのだが、「初めての試み」というときは、メロディラインが非常に素直なものになるようだ。美しいメロディが素直に心に染み込んでくる。しかし驚くことに、バックメンバーは先の「美貌の罠」と同じ。

「コーラスグループ小鳩」と名付けられたコーラス隊は、製作サイドのスタッフたち。「いつもありがとう」という田島の心意気が感じられるようで微笑ましい。

2003年10月には、布施明がカヴァーした。しかしこれは、先の「ソウルタトゥー」とは違って提供曲のセルフカヴァーではない。布施明が傷心の気持ちでアメリカから帰った直後に、発売直後のアルバムからこの曲を聴き癒されたことから、布施明本人の意向でカヴァーをしたのだそうだ。ちなみに、2003年紅白歌合戦出場歌手の最新シングルで最も売れなかった曲だったそうである。

7.相棒

相棒」とは誰なのか? 2006年1月25日付のTajima's Voiceなどを読むと、なるほど木暮晋也その人であると思うのが自然だろう。

ただそれならば不思議なのが、この曲の歌詞が過去形であるということ。「同じ夢を見て 果たせなかったのさ」という歌詞は、本当に現在も変わらぬ親交のある木暮氏に向けてのものなのだろうか?

むしろ、相棒L?K?Oなのではないかと自分は思う。『L』の「宝島」でのコラボレーションから6年。『ビッグクランチ』では共同プロデューサーまで務めた彼も、このアルバムでは数曲しか参加していない。続けて行われたツアーでは、メンバーからも外れてしまった。田島のやっている音楽が、だんだんターンテーブルを必要としなくなっていったのでそれは自然な流れではあるが、過去のメンバーの脱退劇と同じような時代の流れをここには感じる。その点からいって、田島の音楽がどんなに変わろうとも1993年以来付かず離れずの関係である、サックスの松本健一は本当にすごいと思う。

L?K?Oは、奇しくもこの曲が最後の参加となっている……いやいや、いくらなんでもこれを「手向けの曲」なんて、あからさまなことはしないよな。

少し陰鬱な影があって、実はあまり好きな曲ではないのだが、それを言ったら「あなたには田島の"ソウル"というものがわかっていない」とツッコまれたことがある。たしかにそうかも…。

8.欲しいのは君

Marvin Gayeの'I Want You'を友部正人の訳詞によってカヴァーした曲。『キングスロード』の源泉であると言ってもいいだろう。1stアルバムに「I WANT YOU?」という曲があるから、タイトルも訳さなければ紛らわしいことこの上ない。

マーヴィンの'I Want You'のオリジナルは、多重コーラスによる大変複雑なメロディの曲なのだが、ここではアコースティックギターによるシンプルなメロディになっている。それは、2001年の「Trial Session」ツアーのオープニングで、カヴァーを披露したことによる(このときは英語詞のままカヴァー、かつピアノによる弾き語りだった)。

その分、アレンジはオリジナルよりも深みに欠けるというのが個人的な印象(イントロのシンセの軽さなど特に…)。訳詞を読みながらじっくりと言葉を聞く方が楽しめる曲だろう。インナースリーヴでも歌詞が引用されている。「愛が本当に素晴らしいは 歌の中だけのことさ」などは、たしかに美しい歌詞だ。

9.Tender Love

ムーンストーン』の直後に出されたシングル第2弾。シングルっぽい、無難な出来。前2曲の影っぽい雰囲気を一掃してくれるような清清しさがある。その一方で、無難にまとまりすぎて物足りない感じもする。

Tender Love

この曲は、テレビ朝日「やじうまプラス」の天気予報コーナーのBGMに使われていた。この第1回放送をたまたま見た。正月明けの朝、なんか田島っぽい曲を歌う人がいるなぁと思っていたら、当人の新曲だったもので眠気が吹き飛んだ。前のシングル「恋の彗星」路線が変わっていなかったので、ちょっとガッカリしたのも覚えている。

春先で別の曲に変わるだろうと思っていたら、その後秋まで9ヶ月間も使われた(Wikipedia参照)。そこから変わった葉加瀬太郎の曲は、ごく最近までずーっと使われていたのは覚えている。

10.こいよ

パンク風味の破壊力のあるナンバーでアルバムは締めくくられる。ヴォーカルにもディストーションがかかっていて、ラウドな印象を強めている。

欲しいのは君」の余勢を駆って、友部正人に歌詞を提供してもらった1曲。


聴き返してみて

ビッグクランチ』の過剰感や、その反動の『ムーンストーン』の静謐感の、そのどちらとも違うアルバムが来るとは予想できたものの、結局蓋を開けてみたら、コミカルな曲が中心の、なんともいいようのないアルバムがでてきた。これが、田島が理想としてきた自然体の「なんでもないポップス」の形なのかなぁという感じもしたので、残念ながら大傑作ではないものの、新しいスタートラインとしての1作なのだろう、と当時は理解していた。

今でも、聴きどころをイマイチ掴みきれない作品である。ただ、今回聴いてみて新しく発見したのは、矢野顕子周辺が参加した"別格"の曲である「美貌の罠」や「のすたるぢや」を外して聴いてみること。そうすると見えてくるのが、意外と田島の「ユーモア」が溢れたアルバムになっているということだ。

A面などは立て続けにコミカルな曲が続いているし、ラスト2曲が「Tender Love」のような"なんでもないポップス"と、過剰にポジティヴな「こいよ」で締めくくられているという流れが、それほど不自然なものでないと思えてくる。「相棒」と「欲しいのは君」の哀愁感も、むしろコミカルな曲とのいい対比になって、さほど陰鬱なものとは感じられなくなる。

クールすぎる「ソウルタトゥー」がアルバムに収められなかったのも、それならば納得がいく。あれが入ってしまっては、さらに散漫な印象が強まってしまっただろう。

その田島の「ユーモア」というのは、田島の"自然体"なのではないだろうか。音楽を作ることそれ自体が「生きる」ことである、田島貴男の自然体。「美貌の罠」や「のすたるぢや」が持っているような「高い音楽性」という束縛からふっと解放されたときにできたような楽曲が並んだアルバム。つまり、一人の人間の「生きる力」が表現された非常に温かみのある作品が、この『踊る太陽』なのではないだろうか。

何かを訴えたいのではなく、普通に「音楽」を作りました、という田島の自然体に溢れたアルバム。アルバムの最後に、「どうだった?」という田島の声がサンプリングされているのも、そういう点から考えてみると意味がありそうだ。

そういえば、最近のインタヴューでも「傑作を作る」ということを拒否するようなことを言っていたのは、そういうことなんだろうか。田島はどんどん肩の力が抜けているんだろうか。