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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード



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オリジナル・ラブに特化したブログです。最新情報から個人的な雑感まで。
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2006/08/03(木)

 その3『L』

|  その3『L』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  その3『L』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの3回目。2番目に大好きなアルバム『L』です。これまでの2回が、愛情の裏返しのような表現をしなければならなかったので、ようやくポジティヴな評価をできます…か?

おことわり

オリジナル・ラヴ マイランキングの各アルバム版です。アルバム全体印象は、そちらを参照してください。

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

L

L

1. Wedding of The Housefly

1分半足らずのインストゥルメンタル曲。「アルバム1曲目は重厚な曲」というオリジナル・ラヴの定石を、8作目にしてはじめて覆した。

アルバムのファンファーレ的な存在になっている。Aphex TwinRichard D James Album』('96)1曲目「4」とアルバム上の位置づけやサウンドが似ていて、影響を受けていると思われる。

タイトルの家蝿がなにを指すものかはわからないが、軽い電子音からの連想なのだろう。

2. 水の音楽

意表を突いた軽い1曲目が終わると、これまでのどんな曲よりも大きいスケールの曲が現れる。個人的には、田島貴男の最高傑作と思っている1曲。

まず特筆したいのが、曲のテーマである「水」の音楽的描写の細緻さ。チョロチョロと湧き出す様子から怒涛のように流れ出す様子まで、水のあらゆる様態が次々と現れる。それを表現するのに、流れるような音色を持ったドラムンベースを使ったのは、きっと偶然ではない。「水の音楽」とは、まさにドラムンベースのことでもあるのだろう。しかし、ドラムンベースの曲でありながら、この曲ほど「ドラムンベース」であることを感じさせない曲を他に知らない。前作『ELEVEN GRAFFITI』で実験的に使いはじめた「機材」は、音楽表現として見事に昇華したのだ。

それに乗せられて歌われる詞。諦念と絶望。砂漠の中を水を求めて独りさ迷い歩き、結局は水の音に導かれていくままに流されていく。『風の歌を聴け』のころに発散させていたスーパーマンぶりから考えると、なんとも弱弱しい。独りユニットになっても、『DESIRE』や『ELEVEN GRAFFITI』でも、オレは寂しくなんかないぜとばかりに虚勢を張っていたような田島貴男からふと漏れた、弱音のような歌詞だ。しかし、それはどちらかというと「本音」であり、田島の「人間」が現れているところではないか。そしてこの「弱さ」を正面から歌ったことが、音楽人田島貴男にとっては画期的なこと。そしてそれこそが、この曲の最も感動的なところだ。

人間は強さだけの存在ではない。脆く儚く、時や涙のように流されていくしかない存在でしかない。でも、明日も今朝のように遥か彼方に響いている音に耳を済ませてしまう。それはもう理屈ではない。そうするしかないのが、人間なのだ。自分の力だけではどうしようもないものへのアプローチ。まるで「祈り」のようでもある。

これらのサウンドと歌詞が、「水」を共通のモチーフとして絡み合い溶け合っているのが、この「水の音楽」という曲だ。これは音楽による「美」の骨頂である。

鍵、イリュージョン」もそうなのだが、弱さを歌うことで田島は「人間」を表現することがある。この「人間」は非常に生々しく、そして切ない。なにがしかの「人間の真実」を描写するのが芸術ならば、これらの曲はまぎれもなく芸術作品である。

しかし、ただ弱音を漏らしているだけの曲ではない。地平線の向こうのエコー。絶望の先に感じられる希望を匂わせている。これが、アルバム全体のテーマでもあることは、後の「神々のチェス」でわかる。

つい先日の「13号室からの眺め」ライヴでは、奇しくもこの曲が演奏されて、大きなサプライズを起した。しかし、当時「L」ツアーのライヴでも、もうしわけないがレコードの演奏が持つ神々しさはほとんど再現できていなかった。その翌年、「FIRE WALKING」の佐野ドラムのときはかなりイイ線をいっていたけれど、それでもレコードには及ばなかった。レコードの中にだけ刻み込まれている芸術。それをいつでも何度でも聴ける幸運を噛み締めるべきなのかも。

3. ドラキュラ

水の音楽」が終わると、『L』は半分終わったような気分になる(笑)。けれどもあとが「残り10曲」というだけなら、2番目に好きなアルバムになるわけがない。「水の音楽」のスケールが大きすぎるだけで、あとはあとでそれなりの味わいがあるし…と書いているうちに曲が終わってしまいそうなので、「ドラキュラ」に戻ろう。

QUEENやBOSTONのアルバムには「No Synthesizers」というクレジットがあるけども、その反対をいった打ち込みだけの曲。もしも、東芝時代のころにタイムスリップして、「×年後の田島は生楽器使わないで一人で打ち込みやってるんだぜ」と言っても誰にも相手されない、そんな曲だ(それはそれで「やっぱりね」と信じる人もいるだろうが <たぶん自分)。

この曲も、前作『ELEVEN...』の「機材」の未消化をキッチリと消化している曲。生楽器を使わずにこのグルーヴを出すとは、田島の才能の真骨頂を見る思いだ。そして、スッカラカンのサウンドは、まさに『L』を象徴する音。次の『XL』でもライヴヴァージョンを聴くことができて、それはそれで好きだが、この元曲の軽さも実に捨てがたい。

4. 宝島

宝島

宝島

アルバムの半年前にシングルとしてリリースされた曲。次のアルバム『ビッグクランチ』で大活躍することになるL?K?Oの初参加作で、ブレイクビーツに正面から挑んだ曲。

シングルとして出されたときには、そのジュブナイル的な歌詞に付いていけなくて、アルバムに入ってからも長いこと理解できない曲だった。時間が経った今では、だいぶ抵抗感は薄れて、チープなブレイクビーツを楽しむ余裕もできた。そう、なんかチープ。ピチカート時代の「これは恋ではない」のヒップホップを聴いている感じ。

トヨタ・イプサムのタイアップあり。CFも3回くらいリニューアルされて、半年近くは使われていた。CMタイアップとしては最長だろう。

シュールなプロモーション・ヴィデオは、東京の番外地、豊洲で撮影されたもの。第2回フジロック会場の近く。

5. ハニーフラッシュ

当時大流行(というより社会問題)だった援助交際を歌ったもの。「ドラキュラ」と同じくピコピコだけの曲だが、こちらではグルーヴ感は排除されていて、ひたすら軽薄な音になっている。援交の軽薄さ加減をサウンド的に表現したのだろう。

が、さすがにオリジナル・ラヴ的にもかなりの問題作。前の曲とこの曲とで、田島から完全に離れてしまった人も少なくないはず。実はこの曲は、前年ツアーの最後に渋谷クアトロで1日だけ行われたライヴで披露された「MASKED」のアレンジがベースとなっている。それで自分は、心の準備ができていたから、それほど大きなショックは受けずに済んだ。

なぜ、援助交際がポップスの題材となったかといえば、田島はデビュー前から「リアリティ」を重視していたから、という答えになるのだろう。レッドカーテンのころは、もっぱら英語でしか歌わず、格好付けの音楽しかやっていなかったのだが、オリジナル・ラヴに改名したころから、きちんとした日本語の歌詞を歌い始めた。そしてその目的は、「リアリティ」なのだ、というインタヴューをかつて読んだことがある。この曲でも、別に徒に社会的な問題提起をしたかったのではなくて、「現在」を歌にした結果がこれなのだろう。

こうした田島の、ポップスと現実社会とのリンクを重視する姿勢は、ずっと一貫している。たとえば、3rdアルバムの『EYES』というタイトルは、「社会を見る"眼"」の意味があったのだという。

歌詞に「PHS」という言葉を使ったことも、田島としては画期的だった。なぜなら、『RAINBOW RACE』のころは「歌詞に"ポケベル"を使うような普遍性のないポップスは書きたくない」というような意味のことを言っていたからだ。しかし、これは宗旨替えなのではなくて、上記の「リアリティ」にこだわった結果なのだと思う。こんな風にこの『L』というアルバムは、前作にも増して歌詞へのこだわりが随所に見られる。そのピークは次の『ビッグクランチ』にあると思のだうが、その話はそのときのレヴューで。

6. Crazy Love

Crazy Love

Crazy Love

先行シングル。最初に演奏されたのが、'98年8月のフジテレビ「FACTORY」の番組収録において。そのときに小西康陽と数年ぶりの邂逅をして交流が再開、2年後に曲提供を受けたり(「殺し」)、ピチカートにゲスト参加したりすることになる。また、その演奏はL?K?Oの初舞台でもあった。

田島自ら「1年に1曲しか書けない曲」と言ったほどの美メロのバラード。一人仕事の代名詞(笑)サウンド・オブ・ウォールもお見事。

だけれども、個人的には、前作の「アイリス」や次アルバムの「ショウマン」の間に挟まれて、いまいちパッとしない感じのする曲だ。たぶん、短調なのが、曲の寂しさを倍増させているからかな。あるいは、田島のバラードの持つ伸び伸びとした感じが、機械音で萎縮させられてしまっているようだから? 「バラード歌手」というレッテルに悩んでいたころだったし。

7. 大車輪

インダストリアルなミュージックコンクレートのようなサンプリング(ハハハ、カタカナばっか)。はじめて聴いたときはうわぁ…と軽く引いた。一人仕事の悪い部分が出たようだったから。

けれども、こんなに田島らしい曲もない。まるでメジャーデビュー前に戻ったかのような、変態チックな曲。またタイムスリップ話で申し訳ないが、1980年代に戻って当時のファンにこの曲を聞かせても、あまり違和感を感じないのではないか。8枚もアルバム出しておきながら、まだこういう曲も書く度胸はすごい。レコードだと音が軽すぎてあまり好きになれないのだが、ライヴで聴くのは大好きだ。心なしか、田島もこの曲を演奏するのは楽しそうに見えた。

「歴史にうずもれた無数の火の粉を思う」という歌詞が、結構好き。

8. 呆気ない幕切れ

オリジナル・ラヴで最短。

9. 羽毛とピストル

このアルバムでもっともソウル色の強い曲だが、なんとかというエフェクター(名前忘れた)を使っていて、ソウルミュージックの肉体臭を見事に消し去っている。その徹底ぶりはお見事というほかない。

さらにそのエフェクトのおかげで、切なくて狂おしい極上のラヴソングの空気が増幅されていて、こちらの曲の方が「Crazy Love」という感じがする。バラード対決として、個人的にはこちらに軍配を挙げる。

10. インソムニア

鬼束ちひろや同題映画の方が有名だが、それらよりも早い。この曲も、徹底的にグルーヴが排除されて硬直したサウンドになっている。はじめて聴いたときは、あちゃぁ…と、もう相当に引いた。田島もとうとうここまで堕ちてしまったか、と。orz

けれどもその後、ニューウェイヴ期に青春を過ごした人がこの曲を非常に高く評価していて、そういうものなのかと納得した。今でも好きな曲ではないが、理解はできる。

歌詞は、実はすべてカタカナ。人間の感情がそもそも篭っていないらしい。これも『L』における歌詞のこだわりの一例。

11. 神々のチェス

宝島」以後、なんか貶しの方が多くなってしまった。しかし、この『L』をアルバムとして大好きなのは、ここからの盛り返しがあるからだ。

この曲は、「水の音楽」と対になった曲だと思う。「すべてなにもうらやむこともはかなむこともない」。これが「水の音楽」への回答であり、そういう「諦念」がこのアルバムのテーマでもあるのだと思う。なにをしようとも、われわれの人生なんて神々の遊ぶチェスの駒にすぎない。運命の気まぐれの前には、一個人の想いなど塵芥に等しい。そんな風にすべてを諦めきった気持ち。ただし、それはまるで修行僧のように澄み切った心境。だから最後に「旅は続くよ」と、まがりなりにも前向きな言葉で締めくくることができたのではないか。

「チェス」のたとえは「ペテン師のうた」からの自己引用であると思われる。あちらでは、現状を軽く笑い飛ばそうとしていたカラ元気もまだあったのだが、この曲では対称的に沈重してしまっている。

そしてクレジットを見ると、意外にも生楽器を使っていない。「機材」の利用、ここに極まれり。

2004年「沈黙の薔薇」ライヴで、この曲を久々に演奏していた。ベースとサックスと3人だけでのシンプルな演奏は、この曲の透明感を出していて最高だった。

12. 白い嵐

前曲の余韻をぶちっと切って割り込んでくる、アコースティックギターをフィーチャーしたフィナーレ。

この曲にはとても広大な空虚感がある。それこそ宇宙のような。宇宙空間は「真空」とはいっても、実際にはわずかばかりの分子が漂っている。そういう塵も集まれば、星にもなるし、われわれのような人間にもなる。そんな満溢した空虚感。

だから、『XL』でやっていたような、ホワイトノイズの中に漂うようなアレンジは、もろにハマっていたように思った。「TRIAL SESSION」のときも、さらにノイジーなアレンジになっていて、あれがこの曲のベストパフォーマンスかな。


聴き返してみて

発表された時期は、不景気真っ只中の1998年。ピチカート・ファイヴもまさに「不景気」という曲を書いていたころ。先が見えないというか、今まで明るすぎる部屋の中にいたのが、突然ブレーカーが落ちて真っ暗になって目が効かなくなったような時代。その時代の空気を、このアルバムはきっちりと封じ込めている。

このアルバムのテーマは、「空虚」と「諦念」だと思う。ジャケットのグラマラスな肉体を持った女性の中身も空っぽである。そう、これはあまり救いのない暗いアルバムなのだ。田島が敬愛するカーティス・メイフィールドの中でも、田島が一番好きだというアルバム"There's No Place Like America Today"(asin:B0000089AX)を、自ら作ってしまったといえるのかもしれない。

このアルバム内では「希望」は留保されている。それは、音や言葉の端々から微かに漏れているにすぎない。しかし、その光を感じながら、暗闇の中で英気を養うことができる。それがこのアルバムの素晴らしいところで、疲れ切っているときに聴くと、生きる力が水のように湧いてくるアルバムだ。1曲1曲ごとには辛辣なことも言いたくなる(もう言っているか)のだが、その軽薄さや安っぽさがあるからこそ、影と光のコントラストが引き立つ。アルバムとしての完成度は尋常ではない。「ひとり」になったことのマイナスを、いっぺんに覆してしまった傑作アルバムだ。

そしてこのアルバムは、「反=ORIGINAL LOVE」である。肉体的なグルーヴ、生楽器の音を大切にしてきた(主に東芝時代の)ORIGINAL LOVEを、自ら真っ向から否定するかのようなサウンドである。

個人的にも、このアルバムを聴いてようやく、東芝時代のORIGINAL LOVEに区切りが付けることができた。そして田島貴男がソロ名義にしなかったことを、このとき感謝した。今でも大好きなバンド時代のORIGINAL LOVEと、手探りで自らの人生=音楽を切り開いていく田島貴男個人のオリジナル・ラヴ。両者を「オリジナル・ラヴ」という名の下に、いっぺんに享受できる僥倖を手にすることができたのだから。

2006/06/27(火)

 その2『DESIRE』

|  その2『DESIRE』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  その2『DESIRE』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの2回目。シリーズ化しようと思っていたのに、第1回『ELEVEN GRAFFIT』からはや1年余。全アルバムとも、1年に1回は書こうという当初の意図を思い出してみると、実は、この1年でまったく聴いていないアルバムもあったのではないか…という事実が浮き彫りに…。まぁ、マイペースでいきます。

おことわり

オリジナル・ラヴ マイランキングの各アルバム版です。

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

Desire

Desire

発売当時の状況

前年(1995年)秋のツアー、木原龍太郎と小松秀行の姿がステージから消えていた。ついにORIGINAL LOVEは、田島のソロ・ユニットになってしまった。過去メンバー脱退時もそうだったのだけど、ファンへ向けての公式アナウンスは、特になかったように覚えている。

そのツアーの最中に「新曲」として発表された「プライマル」は、翌年(1996年)2月に発売、NTV系ドラマ「オンリー・ユー~愛されて」の主題歌としてタイアップされたことで、ORIGINAL LOVE最大のヒット曲となった。たしか60万枚。オリコンの最上位は6位だったか。

「一人バンド」に「大ヒット」という環境の激変にも関わらず、田島は淡々と次のアルバム制作に取り掛かっていた。しかし、田島の次の方向性はどうにも訝しいものだった。当時のラジオ番組「Pulse of Love」を聴いていると、どうやら民族音楽の収集に向かっているようだったからだ。番組では、アラブ、ギリシャ、インドなどの音楽を掛けまくっていてた。先のツアーでも、沖縄の三線をフィーチャーした「東京~沖縄~ニュー・オーリンズ」(仮題)という新曲も披露していた。

大体の人が考えていた方向性は、「プライマル」を旗頭にして、いよいよ万人大衆ウケする曲を連発していく方向か、「男ユーミン」と揶揄されたような*1大人のポップスを追及する方向かだったので、「プライマル」のヒットで入ってきた新しいファンも、アーバンポップスを期待する古いファンも、どちらも先の見えない状態だった。

夏が近づくと、いよいよアルバムの内容がわかってきた。やはりこれまでの方向性とは大きく違う、民俗音楽をフィーチャーする方向だった。三線ばかりではなく、ウードやスルドといった楽器をふんだんに使い、曲ごとに民俗色あふれるアルバム。まるで、「プライマル」のヒットを否定するかのような、これまで以上にマニアの方向へ向かうようだった。DESIRE=欲望というタイトルも、「それが田島のやりたかったことなんだろうか?」という戸惑いをいたずらに誘うだけだった。一方、ファンにとっての目玉は、あの小山田圭吾が絶賛していた幻の名曲「少年とスプーン」がリヴァイヴァルされることだった。

先行シングルは、さわやかなポップチューン「Words of Love」。「プライマル」の余勢を買ってか、スマッシュヒットとなった。


マイレビュー『DESIRE

以前の評価は、マイランキング8位『DESIRE』を参照のこと。

しかし今回、聴きなおして、評価が大きく変わった。上では、『街男』を「分水嶺」として、このアルバム以降を辛く評価していたが、今はこのアルバムを、その分水嶺の良い側へ置きなおしたい。つまり、このアルバムは、やっぱり素晴らしいと思ったのである。

1.Hum a Tune

「調べをうなる」くらいの意味のタイトルの軽い語感とは裏腹の、重量級のオープニングソング。次の「ティラノサウルス」まで、ORIGINAL LOVEの1曲目といえば、大作なのが恒例だった。途中で1回ブレイク部を置く2部構成は、「Darlin'」という前例はあるもの、さらに明確に構成を意識してスケール感を出している。

個人的に、構成のしっかりとした大曲は大好きなのだが、この曲は案外そのスケールの大きさと釣り合っていないような気がしていた。singでもshoutでもない、この「hum」(口ごもる)という控えめさがあるから? いやいや。それまでの小松&佐野の強烈なグルーヴに慣れた耳にとって、リズム感がなんか平板な印象があったのだ。後の「青空のむこうから?」も同様に、曲の持っている世界観と、実際に奏でられている音がもたらすスケール感が、なんかチグハグな気がしている。つまり、「名曲」であることを認めるには吝かではないんだけど、他の名曲ほど自分の心に突き刺さってこない曲である。

また、シタール風のギターがこの曲ではポイントとなっているが、たしかこの当時、とくに斬新なものでなかったような覚えもある(もっとも、他になにがあったのか思い出せないのだが)。

でも、田島にとって、「ソロ」1作目のオープニングソングであるこの曲が、非常に重要なものであることは、好き嫌いに関わらず伝わってくる。後に、田島がはじめて監修したベストアルバム『変身』にこの曲が選ばれたことは、とても納得がいった。

たしか、このパーカッションのアレンジは、以前のツアーで「The Rover」で試されていた。

なお、ファンクラブの「プライム・チューン」の名称は、この曲(と「プライマル」)から取られている。

2.ブラック・コーヒー?

上で「分水嶺」が変わったのは、この曲の再評価が大きい。この曲はずっと、コミックソングとしか聴いていなくて、「Hum a Tune」の余勢をこの曲でぶった切ってしまうあたりが、大いに不満だった。

ところが、今回聴いてみると、以前ほどにコミカルには聴こえなくなっていたのだ。なぜかと考えて、すぐにわかった。『踊る太陽』や『街男 街女』を通り過ぎて、そういう曲に耐性ができたからだ。

たしかに、「Jumpin' Jack Jive」や「真夏の女たちへ」のように、コミカルな曲はこれまでにも存在している。しかし、それらの曲が特に気にならず、この曲を必要以上に軽く感じさせていたのは、やはり大作「Hum a Tune」の直後だったからだろう。さらに、「Hey! Space Baby」や「Yen」のような曲を通り過ぎた耳には、もうこの曲を毛嫌いする理由はない。…というか、当時からこの曲に抵抗なく染まれた人は、田島の本質を見抜いてる人なんだろうな、と尊敬。

ちなみにオランダでは、「コーヒーショップ」とはソフトドラックを吸えるお店のこと(普通にコーヒーを飲みたいなら、カフェへ行かなければならない)。そういう耳で聞くと、結構面白い曲。オリジナル・ラヴにとっての「Lucy in the Sky with Diamonds」か*2

ラテンミュージックにしてもちょっと能天気なリズムは、実はギリシャ音楽からの影響。

3.ガンボ・チャンプル・ヌードル?

まぁ間違いなく、ORIGINAL LOVEの中でも5指に入る珍曲。って、あと4曲もあるのかよ!?(あるな)

前年のツアーで、「ニューオーリンズに行ってできた新曲です」といって、披露された。そのときの困惑は、こないだの「ピストル・スター」の比ではない。でもこのとき、ピアノをKyonがやっていたんだよね。あれはよかった。

今聞いても、田島と目を合わせられないような困惑のある曲だけど、楽しい曲であるのも確か。「始発列車も忘れます!」と歌いながら、ORIGINAL LOVEファン仲間と朝まで遊んだ思い出もある(遠い目)。ただ、アルバム3曲目だけは、やめて欲しかったなぁ。

全然関係ないけど、この3つの食べ物の中では、ガンボが一番好き。ヨーロッパ好きなのでアメリカの地に憧れは少ないけど、ケイジャン料理は例外の一つ。行ってみたい。

4.青空のむこうから?

Hum a Tune」と並んで、肩透かしの大作。と、書いてしまった理由は上述。その原因は、サビの裏で奏でられる、アコーディオンを支える音が何か足りないというあたりから出ているようだ。「Hum a Tune」のように、もっとパーカッションを入れれば、より地に付いたアレンジだったと思うのだが。

以前は「ブラック・コーヒー」で切られた勢いが、ここまで聴いても戻らなかったのだが、今回聴いてみると悪くない。やっと普通に聴けるようになったようだ。

歌詞を読み返してみると、やっぱり「鍵、イリュージョン」に繋がるものがある。「いつだって愛していよう」のくだり。

'99年に日比谷の野音でライヴがあって、このときに野外で演奏された1曲がこれだった。GOROさんのディジリドゥも混ざって、大地や空と一体になるような演奏。あれこそがこの曲の真価なのだと思った。ファンクラブ限定の上、すでに廃盤だが、ライヴヴィデオ『FIREWALKING ― ORIGINAL LOVE TOUR 1999 焔歩』に収められていたので、この曲が好きな人はぜひ聴いてみて欲しい。

5.Masked?

はじめは、奥田民夫にしか聴こえなかった(笑)。民夫のソロデビューも、ちょうどこの直前だったし。

田島にしては珍しいディストーションの効いたギターだったが、最近、『踊る太陽』以降には散見できるようになってきた。田島の目指す音のひとつなんだろうか。

'96年のライヴで、ゲーム・コントローラーを持つパフォーマンスによる電子音アレンジで、この曲を再演していた。そのアレンジは、意外にも『L』の「ハニー・フラッシュ」の原型だった。アルバム聴いているだけだと、その2曲の繋がりなんか想像も付かないだろうけど。

6.Words of Love?

Words Of Love

Words Of Love

プライマル」のネクストシングルだったおかげで、ファンではないが当時のオリジナル・ラヴを知っている人だと、この曲を覚えている人がたまにいて驚かされる。

メロディは田島らしさがあるものの、曲調は当時の売れ線アレンジ。「いい曲」なのは間違いない。でも、それだけという感じがする(好きな人多いと思うのだけど、すみません)。

それにしても、この歌詞に違和感を覚えるのは自分だけだろうか? 後に出た「GOOD MORNING GOOD MORNING」のせいで薄らいだけど、はじめて聴いたときは、「田島ってこんな歌詞書くっけ?」という猛烈な違和感があった。

7.黒猫

この曲からあとは、まさに『DESIRE』の真骨頂。民俗音楽と田島の一流のポップスセンスが幸福な融合を遂げている。というか正直な話、『DESIRE』は7曲目以降しか聴かない時期もあったような…。

とくにこの「黒猫」は、田島の「濃さ」が見事に異国のメロディに乗っかっている。妖しさの相乗効果。文句なしの佳曲。アルバム直後のツアーでも1曲目を飾っていた。

8.日曜日のルンバ

これも最高。実はこのアルバムで一番好きな曲。ルンバのウキウキしたリズムに、日曜日のルンルン気分(笑)が完璧に乗っかっている。ストーリー仕立ての歌詞もお見事。曲の完成度としては、「黒猫」を凌ぐ。

9.プライマル

ORIGINAL LOVEの代表作なわけであるが、なんだかんだ言っても好きですよ、自分は。でも、10年経って、「接吻」ほどのクラシックにはなりきれていない感じ。まぁ、しょうがないのかも。初めて聴いたとき、自分も「接吻パート2かぁ…」と思ったくらいなので。

後に「Crazy Love」のときに、「こういうメロディは1年に1曲しか書けない」と言っていた。大変なのはわかるが、でも、今でも田島はこのくらいのメロディはもっと書けると思うんだけど。出し惜しみしていないかい?

次の年だったか、ライヴでソウルミュージック直球なアレンジにしていたのが忘れられない。

「君の部屋を見上げ続けた」という冒頭の歌詞は、ドラマの第1話のラストシーンから。ドラマを先に見て、歌詞を書いたそうだ。

プライマル

プライマル

10.少年とスプーン?

もう20年も前に作曲された曲。当時の田島本人も「こんなコード進行、もう今じゃ書けないよ」と言っていた。

今はない「月刊カドカワ」という雑誌が、『風の歌を聴け』の特集を組んだとき、小山田圭吾が1980年代(メジャーデビュー前)のORIGINAL LOVEの曲を紹介するコラムがあった。その中で「名曲」として紹介されていたのがこの曲だった。その雑誌で読んだときは、「どうせ聴けないし」とスネていたものだが、まさか陽の目を見る日が来るとは思っていなかった。それだけでも思い出のある曲。

ところが、その後、当時のオリジナルを聞く機会が訪れた(当時のファンの秘蔵テープから聞かせていただいた)。基本的なメロディはそのままだったが(1番と2番の間にブリッジがあった)、歌詞の世界が大きく違っていた。オリジナルの歌詞では、主人公は少年であり、大きくなったスプーンに乗って海で冒険を繰り広げるという内容。つまり、この『DESIRE』の「少年とスプーン」は、その当時を振り返った歌詞になっていたのである。

この曲を聴いた後で、田島の育った芦屋へも行く機会があった。高級住宅地らしく丘の斜面に家々が並ぶ芦屋は、坂道と小川の街で、まさにこの曲のイメージどおりだったことに感動した。

聴き返してみて

街男 街女』と近いアルバムなのだと思った。

民俗色に溢れるアルバムだが、田島本人は「海外ではなくて、東京のポップス」と断言していた。「少年とスプーン」はボーナストラックのようなものと考えれば、それもわからなくはない。

『街男』は、田島流のシティポップスということができると思うし(そういう評価があまりされていないのが残念なのだが)、『DESIRE』は10年前に同じことをやっていたということになる。

*1:実際にそういうレビューが当時あった。

*2:ビートルズのこの曲の裏の意味は、調べればわかります。

2005/04/12(火)

 その1『ELEVEN GRAFFITI』

|  その1『ELEVEN GRAFFITI』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  その1『ELEVEN GRAFFITI』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおすシリーズの1回目。マイランキングの各アルバム版です。

最初は、マイランキングで奇しくも"11"番目となった『ELEVEN GRAFFITI』から始めます。

ELEVEN GRAFFITI

ELEVEN GRAFFITI

おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点でどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

アルバム全体の評価は、http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20050309/p12を参照してください。それを前提に書いているところもあります。

1.ティラノサウルス

人力ドラムンベースで、このアルバムを象徴する1曲。当時は「田島もドラムンベースに接近」といくつかの雑誌記事でも取り上げられていた。しかしドラムンベースが「最先端」だった時期はその1~2年前くらいだったので、田島のアンテナの鋭敏さを見せ付けられたような気はしなかった。

まぁ実際、ドラムンベースはあくまでも素材にすぎない。そして今聞けば、思ったよりもアコースティック感が強いことに気づかされる。どちらかといえば、次の「ペテン師の歌」と並んでベックの影響が強い1曲なのではないだろうか。

2.ペテン師のうた

前曲と並んで、「機材元年」のこのアルバムを象徴する1曲。やはり今聞くと、機材云々よりもアコースティック感の強さが目立つ。印象的なベースリフは、ソウルの元ネタがあるようだ。「渋谷系」時代に田島が十二分に発揮していたミクスチャー感覚が、90年代後半になって再び顔を出した曲か。

子供の声は、魂列車1号がドイツかなにかで手に入れたCDのサンプリング、だったっけ? リコーダーは田島が吹いていたんだよな、たしか。

3.ビター・スウィート

一転、機材が影を潜め、アコースティックを前面に出した小品。メロディの甘さは田島貴男ならではの一級品。前の2曲や『DESIRE』にはない素直なメロディラインに「まだまだ田島もやるもんだねぇ」と思っていたら、大学時代に作った曲のリメイクなのだそうだ。

リコーダーとグロッケンの可愛らしさが曲にピッタリ。中山努のオルガンとシンセの入り具合は、木原龍太郎を思い出させる。1,2曲目と3,4曲目には大きな断絶があるような印象を持っていたのだが、今改めて効くとリコーダーやらオルガンやらで、「ペテン師」から緩やかにこの曲に繋がっていることに気づく。


4.アイリス

プライマル」の発展系というか、田島大得意の極甘バラード。当時「失楽園」ブームで、そのドラマのタイアップに用意した曲なのではないか?と思うほどの不倫の歌。その後実際にテレビドラマ化されていたときの主題歌は、この曲を超えるものではなかった。

この曲がシングルカットされなかったのは、「プライマル」の持て囃され方にさすがの田島もウンザリしたためなのか、宣伝の下手さなのかは、どうにもよくわからない。ただ、テレビのライヴで1回歌っていたので、もしかしたらそれで「あわよくばクチコミで…」というのを狙っていたのかもしれない(笑)。

この曲の極甘さには、さすがのファンも付いていけない人も多いだろう。自分は、バラードに極甘ものが多いハードロックが元々好きだったせいもあるのかもしれないが、どツボに嵌った1曲だった。「接吻」や「二つの手のように」にハマり、しかし「プライマル」にはちょっとだけ物足りなさを感じていた自分には、この上ない名曲だった…いや、今聴いても素晴らしい。これが下手にシングルカットされて中途半端にヒットしていたら、ORIGINAL LOVEの現在はもっと違うものになっていたろう。いや、「バラード歌手」のレッテルに嫌気を指して、ORIGINAL LOVEとしての活動は終わっていたかもしれない。

この曲を超えるバラードはもう出ないと当時は確信していたが、3年後に「ショウマン」が出て覆されることになる。

5.2分の路上駐車

メジャーデビュー後、始めてのインスト曲。

シングル「GOOD MORNING GOOD MORNING」のカップリングだったが、2分さえもない曲。「やっつけ仕事?」と思ったりもしたが、その2曲を続けて聴くと日曜の朗らかなドライヴのムードが出ていて決して不快ではなかった。

6.ローラーブレイド・レース

「B面1曲目」らしいアップテンポナンバー。佐野康夫のドラムの面目躍如たるこの疾走感は、久しぶりに「ORIGINAL LOVEの曲らしい」感じがしたものだった。同時代のファンの「ぼくらの時代の『Jumpin' Jack Jive』だ」という評価が印象的で、今でも覚えている。

今にして思えば、バリトンサックスは例の「ジュピター」のお父さんだ。そのサックスを抜かせば、トリオでやっている曲なんだな。これはすごいぞ。

2003年のライヴのオープニングに使われて度肝を抜いたのも記憶に新しい。

7.アンブレラズ

この『ELEVEN』を象徴する、シンセサイザーとスライドギターを効かせた曲。今にしてみれば「機材機材」とはいっても、アコースティック感が強いのが、このアルバムの特長なのかもしれない。サウンドオブウォールばりの田島の厚いコーラスも印象的。このコーラスが次に出るのは「Crazy Love」か。

珍しく映像的な歌詞で、駄作の多いORIGINAL LOVEのヴィデオクリップの中でも、さすがにまともなレヴェルに落ち着いていた。

8.机の上のファントム

またインスト曲。「2分の路上駐車」と並んで、この小品2曲を加えて「11」なのか?という不信感があった。歌詞付きの曲に昇華できなかっただけじゃないの?という感じ。この曲のモチーフは、未だに知らないままなので、余計にそう感じる。

ヴァイオリンの斉藤ネコは『結晶』ラストの「セレナーデ」以来の参加。

9.サーディンの缶詰め

この曲のブルージーなサウンドは、「機材」と並んでこのアルバムのテーマのひとつだと思う。そんなアルバムの象徴的な曲があまり好きになれないから、アルバム全体の評価も少し厳しくなってしまうのだろうか。なんだか、メロディが弱い。いかにブルージーな曲とはいえ、ちょっとキャッチがなさすぎないか。

逆に見るべきは歌詞。ラフスケッチのような歌詞は、次のアルバムで「インソムニア」となり、さらに「文字化けしたホームページのようだ」と言われた「MP」へと発展していったのだと思う。

ディスクではあまり好きになれなかったが、ライヴでのパフォーマンスは好きだった。とくにリクオのジャンプ。

10.GOOD MORNING GOOD MORNING

リバーヴの効いた声といい曲調といい、最初は本当に佐野元春にしか聞こえなかった。「プライマル」~「Words of Love」の次のシングルとしては悪くないし、シングルなんだからあまり実験的なものを出してもしょうがないのはわかるのだが、どうにも平板な曲にしか聴こえなかったのが不満だった。ORIGINAL LOVEはこういう「素直なポップス」も書けるところが素晴らしいのでもあるのだが。

GOOD MORNING GOOD MORNING

GOOD MORNING GOOD MORNING

そういえばタイアップのコマーシャルは、わずか1週間しか流れなかった。実際に見たのは1回だけだった。

2004年の冬ツアーのアンコールで久々に復活。荒々しい歌い方と曲とのミスマッチぶりがなんとも痛快だった。

11.踏みかためられた大地

裏テーマであるらしいアコースティックによるバラード。「素直なポップス」なら、こちらの方が好み。「アイリス」のようなクドさはないんだが、素の田島がポツリと出ているような感じが素敵だ。『街男 街女』の「鍵、イリュージョン」の先駆といえるだろう。


聴き返してみて

「機材元年」といって、中途半端にシンセ路線に走った感のあったこのアルバムだが、今聞いてみると思ったよりもアコースティック感が残っていて、機材臭が少ない。というか、その後の『L』だとか『ビッグクランチ』だとかを知ってしまった耳には、やはり「中途半端」な機材の使い方なのだ。自分が次の『L』をあっさりと受け入れられたのも、その半端ぶりに不満を持っていたせいなのかもしれない。しかし、当時の田島はこれ以上のことはできなかったろうし、これだけでも当時のファンはそれなりに戸惑ったりしたものだ。

それから、グルーヴ感の欠如。あの佐野康夫が叩いていることを忘れてしまいかねないアルバムだ。これは逆に言えば、佐野にこれほどの冷たいビートを叩かせている田島のプロデュースを誉めてもいいのかもしれない。個人的には好きではないが。

心底嫌いな曲は、さすがにない。ORIGINAL LOVE全体として見ても、3,4,6,11は本当に好きな曲だ。でも、アルバムを象徴するような1,2,7,10のあたりにそこまでの愛着がないのが、マイランキングで11位になってしまった理由なのだろう。しかし決して最下位なのではない。11番目に好きなアルバムなのだ。