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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード



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オリジナル・ラブに特化したブログです。最新情報から個人的な雑感まで。
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2007/06/05(火)

 その7『踊る太陽』

|  その7『踊る太陽』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  その7『踊る太陽』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの7回目。『ビッグクランチ』の予定だったのですが、まったく収拾が付かなくなってしまった(3回シリーズになりそうになっている…)ので、気晴らしに『踊る太陽』を先にやってみました。

「田島中毒」のアンケート対象の1枚でもありました。自分は「どちらかというと苦手なアルバム」と回答しました。どのくらい「苦手」だっけかなぁ…と確認する意味で聴いてみたら、いろいろと書きたいことが湧いてきました。

ここを読んでいる方はほとんどアンケートも回答されていると思いますが、あちらの方でこのアルバムについて語り足りない方がいたら、コメントいただけると嬉しいです。

おことわり

オリジナル・ラヴ マイランキングの各アルバム版です。アルバム全体印象は、そちらを参照してください。

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

踊る太陽

踊る太陽


発売前

ムーンストーン』のころにラジオ番組「バースト」が終わり、田島に関する最新情報は、オフィシャルサイトの「Voice」とファンクラブ会報のみという、なんとも心許ない状態になってしまった。入ってくるのは、「ボクシングをはじめた」「岡本太郎にハマっている」という断片的な情報と、2曲のシングルのみ。それも「やっとラヴソングが書けるようになってきた」などという妙な一言の割には、当たり障りのない楽曲を出してきたりで、田島がどういう方向へ進もうとしているのかまったくわからない状態だった。個人的には『DESIRE』のころのような五里霧中の感じがしていた。

それで気分的に盛り上がらなくて、実はアルバム発売当日に買わなかったアルバムだった。(3日経ってからようやく買った)

1.ブギー4回戦ボーイ

ボクシングに熱中していたものがそのまんまタイトルとなって現れた曲。

「4回戦ボーイ」とは、プロテストに合格しただけのC級ライセンスのボクサーのことである。このクラスの試合は4ラウンドしかないので、4回戦なのだそうだ。

また、「マイナスに懸けてみるんだ」という歌詞に象徴されるように、岡本太郎の影響を最も受けた曲でもある。岡本敏子もこの歌詞を読んで微笑ましく笑っていた。

この時期はT-REXくらいしか聞いていなかったと言っていただけに、重いギターが刻まれるコミカルな曲。重量級なのにコミカルというのが、1曲目としてははじめての試み。

ムーンストーン』が「軽み」のアルバムだっただけに、その対極を行くようなオープニングにはそれなりに納得がいって、はじめて聞いたときから好きな曲。

2.ふられた気持ち

またもブギー調のコミカルソング。1曲目を電気増幅させたような「おバカ」な曲で、このアルバムの中でもとくに好きな曲。「後期LED ZEPPELINみたいだ」という感想を読んだことがあるが、ブワブワっとした肥大感はたしかにそうかもしれない。

喉も張り裂けんばかりにシャウトしまくっている。いつもヴォーカルのレコーディング時はカーテンを閉めた部屋で篭もるようにしているそうなのだが、この曲は木暮晋也のアドヴァイスでカーテン全開で収録したのだそうだ。その勢いがそのまま溢れ出ている。

3.恋の彗星

プロモーションヴィデオでは、サビの部分(Carry on~)のところで電飾がバーっと光るあたりが完全に笑いどころのツボに入っている。「夢から覚めた机 頬が痛い」などのコミカルな歌詞もあるし、前2曲のコミカルさをうまく引き継げているはずなのだが、曲だけで聞いてしまうと、やっぱりシングル狙いのお上品な曲になってしまっているのが残念なところ。「Winter's Tale」みたいなリズムキープは格好いいんだけど、名曲というより、「どこかで聞いた」感が強くもある。

ムーンストーン』の後に出された新曲第1弾。まだアルバムの作成に入る前。アルバム全体の指標になった曲でもある。ボクシングにハマっているとカミングアウトしたあとの1曲目でもあり、ジャケットでファイティングポーズを取っていたことと、顔がスリムになっていたことの2点が衝撃的だった(笑)。

恋の彗星

この曲のプロモーション時、「やっとラヴソングが書けるようになった」としきりに言っていた。ファンならずとも「ええっ!?」と思うのも当然で、ラジオ出演時にはパーソナリティに相当つっこまれていた。

フジテレビ系「金曜エンタテイメント」オープニング・テーマで、サビが「フライデーナーイト」に変わっていたらしい。

4.Hey Space Baby!

またもやコミカルソング(笑)。というか、オリジナル・ラヴの中でも五指に入る珍曲のひとつだろう。

なんで宇宙のカウボーイなんだ!? タマネギ作るのかよっ!?とツッコミどころ満載の歌詞なのだが、そこは大笑いすればいいだけのところだろう。真に受けて引いてしまっては、松本隆の思う壺だ。

この曲の松本隆の仕事ぶりには、ほとほと感心する。田島にとって正気とは思えないドドンパ的なメロディに歌詞を載せるだけでも大変だろうに、たった4分の中で宇宙を舞台にした一大スペースオペラを構築しているなんて、さすが作詞のプロだなと思わずにいられない。「イエロー・サブマリン音頭」っぽくしてください、という田島のリクエストでもあったのだろうか?

5.美貌の罠

唐突にシリアス路線。この曲だけ、このアルバムの中で浮きまくっている。

美貌の罠

初めての、アルバムと同時リリースのシングル。アルバム『踊る太陽』に関してはほとんど予備知識を持っていなくて、まずはとりあえずこのシングルから聞き始めたのだが、ダンサブルでアダルトなムードを持つあまりの格好よさに、アルバムへの期待感が150%増えたのを覚えている。…ま、そうしていざアルバムを聞いたら「ブギー」だったから拍子抜けしたわけなんだけど。ともあれ、田島がまだこういう曲も書けることを確認できて、心底ほっとしたものだった。

曲はもとより、バックメンバーが豪華。リズム隊が、ブレッカー・ブラザーズなどにも参加したウィル・リーとクリス・パーカー。さらに矢野顕子のジャジーなピアノも聴くことができる。これで格好よくないわけがない。アルバムヴァージョンでのみ聞ける、ラティール・シーのパーカッションソロも素晴らしい。

松井五郎による歌詞は、かなり書き直しがあったらしい。最初に出されたものは「オネエ言葉」すぎて、さすがにカンベンしてもらったとか。

クイズ ポーカーフェイス」という番組のタイアップ。回答者よりも司会者の方が可笑しい変なクイズ番組だった。スイナチッタ。番組ではエンディングにサビの部分が使われていたが、サビだけでは意外とインパクトを感じられない曲である。

シングルのカップリングの「ソウル・タトゥー」も素晴らしい。鈴木雅之に提供したもののセルフカヴァーだが、どこをどう聞いても田島ソウルの1級品。あれがアルバムに入っていたら、また印象が大きく違ったと思うのだが、なぜかそうはしなかった。田島はこのアルバムをシリアス方面には持って行きたくなかったのだろうか?

6.のすたるぢや

田島にとってはじめてか、ヨナ抜き和風メロディライン。アルバム10枚出しても、まだ新境地ってあるものだ。

田島の場合、はじめてピアノだけで作曲したという「ショウマン」もそうなのだが、「初めての試み」というときは、メロディラインが非常に素直なものになるようだ。美しいメロディが素直に心に染み込んでくる。しかし驚くことに、バックメンバーは先の「美貌の罠」と同じ。

「コーラスグループ小鳩」と名付けられたコーラス隊は、製作サイドのスタッフたち。「いつもありがとう」という田島の心意気が感じられるようで微笑ましい。

2003年10月には、布施明がカヴァーした。しかしこれは、先の「ソウルタトゥー」とは違って提供曲のセルフカヴァーではない。布施明が傷心の気持ちでアメリカから帰った直後に、発売直後のアルバムからこの曲を聴き癒されたことから、布施明本人の意向でカヴァーをしたのだそうだ。ちなみに、2003年紅白歌合戦出場歌手の最新シングルで最も売れなかった曲だったそうである。

7.相棒

相棒」とは誰なのか? 2006年1月25日付のTajima's Voiceなどを読むと、なるほど木暮晋也その人であると思うのが自然だろう。

ただそれならば不思議なのが、この曲の歌詞が過去形であるということ。「同じ夢を見て 果たせなかったのさ」という歌詞は、本当に現在も変わらぬ親交のある木暮氏に向けてのものなのだろうか?

むしろ、相棒L?K?Oなのではないかと自分は思う。『L』の「宝島」でのコラボレーションから6年。『ビッグクランチ』では共同プロデューサーまで務めた彼も、このアルバムでは数曲しか参加していない。続けて行われたツアーでは、メンバーからも外れてしまった。田島のやっている音楽が、だんだんターンテーブルを必要としなくなっていったのでそれは自然な流れではあるが、過去のメンバーの脱退劇と同じような時代の流れをここには感じる。その点からいって、田島の音楽がどんなに変わろうとも1993年以来付かず離れずの関係である、サックスの松本健一は本当にすごいと思う。

L?K?Oは、奇しくもこの曲が最後の参加となっている……いやいや、いくらなんでもこれを「手向けの曲」なんて、あからさまなことはしないよな。

少し陰鬱な影があって、実はあまり好きな曲ではないのだが、それを言ったら「あなたには田島の"ソウル"というものがわかっていない」とツッコまれたことがある。たしかにそうかも…。

8.欲しいのは君

Marvin Gayeの'I Want You'を友部正人の訳詞によってカヴァーした曲。『キングスロード』の源泉であると言ってもいいだろう。1stアルバムに「I WANT YOU?」という曲があるから、タイトルも訳さなければ紛らわしいことこの上ない。

マーヴィンの'I Want You'のオリジナルは、多重コーラスによる大変複雑なメロディの曲なのだが、ここではアコースティックギターによるシンプルなメロディになっている。それは、2001年の「Trial Session」ツアーのオープニングで、カヴァーを披露したことによる(このときは英語詞のままカヴァー、かつピアノによる弾き語りだった)。

その分、アレンジはオリジナルよりも深みに欠けるというのが個人的な印象(イントロのシンセの軽さなど特に…)。訳詞を読みながらじっくりと言葉を聞く方が楽しめる曲だろう。インナースリーヴでも歌詞が引用されている。「愛が本当に素晴らしいは 歌の中だけのことさ」などは、たしかに美しい歌詞だ。

9.Tender Love

ムーンストーン』の直後に出されたシングル第2弾。シングルっぽい、無難な出来。前2曲の影っぽい雰囲気を一掃してくれるような清清しさがある。その一方で、無難にまとまりすぎて物足りない感じもする。

Tender Love

この曲は、テレビ朝日「やじうまプラス」の天気予報コーナーのBGMに使われていた。この第1回放送をたまたま見た。正月明けの朝、なんか田島っぽい曲を歌う人がいるなぁと思っていたら、当人の新曲だったもので眠気が吹き飛んだ。前のシングル「恋の彗星」路線が変わっていなかったので、ちょっとガッカリしたのも覚えている。

春先で別の曲に変わるだろうと思っていたら、その後秋まで9ヶ月間も使われた(Wikipedia参照)。そこから変わった葉加瀬太郎の曲は、ごく最近までずーっと使われていたのは覚えている。

10.こいよ

パンク風味の破壊力のあるナンバーでアルバムは締めくくられる。ヴォーカルにもディストーションがかかっていて、ラウドな印象を強めている。

欲しいのは君」の余勢を駆って、友部正人に歌詞を提供してもらった1曲。


聴き返してみて

ビッグクランチ』の過剰感や、その反動の『ムーンストーン』の静謐感の、そのどちらとも違うアルバムが来るとは予想できたものの、結局蓋を開けてみたら、コミカルな曲が中心の、なんともいいようのないアルバムがでてきた。これが、田島が理想としてきた自然体の「なんでもないポップス」の形なのかなぁという感じもしたので、残念ながら大傑作ではないものの、新しいスタートラインとしての1作なのだろう、と当時は理解していた。

今でも、聴きどころをイマイチ掴みきれない作品である。ただ、今回聴いてみて新しく発見したのは、矢野顕子周辺が参加した"別格"の曲である「美貌の罠」や「のすたるぢや」を外して聴いてみること。そうすると見えてくるのが、意外と田島の「ユーモア」が溢れたアルバムになっているということだ。

A面などは立て続けにコミカルな曲が続いているし、ラスト2曲が「Tender Love」のような"なんでもないポップス"と、過剰にポジティヴな「こいよ」で締めくくられているという流れが、それほど不自然なものでないと思えてくる。「相棒」と「欲しいのは君」の哀愁感も、むしろコミカルな曲とのいい対比になって、さほど陰鬱なものとは感じられなくなる。

クールすぎる「ソウルタトゥー」がアルバムに収められなかったのも、それならば納得がいく。あれが入ってしまっては、さらに散漫な印象が強まってしまっただろう。

その田島の「ユーモア」というのは、田島の"自然体"なのではないだろうか。音楽を作ることそれ自体が「生きる」ことである、田島貴男の自然体。「美貌の罠」や「のすたるぢや」が持っているような「高い音楽性」という束縛からふっと解放されたときにできたような楽曲が並んだアルバム。つまり、一人の人間の「生きる力」が表現された非常に温かみのある作品が、この『踊る太陽』なのではないだろうか。

何かを訴えたいのではなく、普通に「音楽」を作りました、という田島の自然体に溢れたアルバム。アルバムの最後に、「どうだった?」という田島の声がサンプリングされているのも、そういう点から考えてみると意味がありそうだ。

そういえば、最近のインタヴューでも「傑作を作る」ということを拒否するようなことを言っていたのは、そういうことなんだろうか。田島はどんどん肩の力が抜けているんだろうか。

2007/03/14(水)

今こそ『キングスロード』を聴き返す

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キングスロード

キングスロード

『キングスロード』の再評価」のあたりでも予告していた、歌詞の比較論。*1

発売当時にはなかったが、今は手にしているもの。ナップスターという強力なツール。オリジナル曲を全部引っ張ってきて、アルバムの収録順に並べて聴き返すことなど、お茶の子サイサイ。血眼になって中古CD屋を巡った1年前が遠い昔のようだ。(…まぁ、そのおかげで、そうでもなければ買わなかったようなアルバムが手元に増えてよかったのだけど。)

ここでは、歌詞のことだけをダラダラ書くだけにするつもりだった。のだが、ミュージシャン方面のウンチクの頼みの綱にするつもりだった「MaxMuse」という音楽配信サイトに載っていた詳細レビュー(http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20060201/p2参照)が、なんと無くなってしまっていた! 調べると、2007年1月12日でサービスを終了してしまったものらしい。ああ保存しておけばよかった…。

と、嘆いても始まらないので、少しクドイかもしれないが、独力で調べてまとめあげたミュージシャンについての情報も、併せて載せておく。

[補筆]「MaxMuseの詳細レビュー」は、yokoさんのおかげで、グーグルのキャッシュに残っていることが判明しました。

なお、前回までの『キングスロード』の感想はこちら

以下、案外長いので御注意。


1.ヒット曲が聞こえる (IT'S THE SAME OLD SONG / Four Tops )

オリジナル曲について

Reach OutReach Out』

フォー・トップスは、モータウンを代表する男性コーラスグループ(カルテット)。メンバーの内、一人が他界して「The Tops」として活動していたが、2005年07月にはリナルド・ベンスンも他界した。

'IT'S THE SAME OLD SONG'は、1965年のシングル。ポップ・チャート、R&Bチャートともにトップになったフォー・トップスを代表するヒット曲。Holland-Dozier-Hollandによる曲。

調べていて、ストーンズファンとして興味深い分析があったので引用。

出だしのマリンバが、ストーンズの"Under My Thumb"のスタジオ・ヴァージョンとそっくりなのですが、この曲が出たのは1965年。

"Under My Thumb"を収録しているアルバム"Aftermath"のレコーディングをストーンズがRCAスタジオで行っていたのは、65年12月3~8日と66年3月3~8日なので、もしかしたら、ブライアン・ジョーンズもこの曲を聴いて、マリンバを使おうと考えたのかもしれませんね。

フォー・トップス
原詞

http://www.stlyrics.com/lyrics/thebigchill/itsthesameoldsong.htm

田島の訳詞・アレンジ

キーは低めだが、明るさは損ねていない。

「ヒット曲」というフレーズは原詞にはない。原曲は「同じ懐かしい歌でも、君がいなければ、違って聞こえるんだ」という内容である。田島は、「ヒット曲が聞こえる」という邦題を意識してその言葉をキーワードに選んだようだ。

最後のリフレインは、原曲では同じ歌詞が続くだけだが、田島は歌詞を変えて、そこまでで訳しきれない世界を補っている。この辺はテクニックだね。

ただ、「Saying together forever Breaking up never」を訳し切れていない。ブリッジの部分なので、そこまで気力が持たなかったのか、いいアイデアが浮かばなかったのか。

過去記事にも書いたが、この訳詞で素晴らしいと思うのは、冒頭のフレーズ。「蜂のように刺して去った」のところ。明るい「ハ」の音でアルバムをスタートさせて、すぐに「サ」で韻を踏んでいる訳は、見事という他ない。(原曲の意味を損ねずに、というのは誉め言葉として使えない。なぜなら、それはアルバム全体のテーマだから)

2.恋の片道切符 (ONE WAY TICKET / Neil Sedaka

ベスト・オブ・ニール・セダカ『Best of Neil Sedaka

オリジナル曲について

'One Way Ticket To The Blues'というのが正しいタイトルのようだ。唯一の50年代の作品で、1959年のシングル。ニール・セダカは、ポール・アンカと並んで称される「オールディーズ」の第1人者。御齢68歳("昨日"が誕生日!)。

日本では、音羽たかしの訳詞により、平尾昌晃がヒットさせている。日本人心をくすぐる演歌的なメロディが、ヒットの要因でもあったようだ。

原詞

http://www.lyricsdownload.com/neil-sedaka-one-way-ticket-to-the-blues-lyrics.html

田島の訳詞・アレンジ

直感的にスカアレンジが閃いたそうで、東京スカパラダイスオーケストラを呼んで本格的にアレンジしている。シングルにもなったこの曲でスカパラの名義がないのは、「めくれたオレンジ」への御礼であるようだ。

この曲には訳されていない英語が多い。例えば、「Bye Bye Love」(エヴァリー・ブラザーズ)「Lonesome Town」(リッキー・ネルソン)「Heartbreak Hotel」(エルヴィス・プレスリー)など。それらは、そもそも元の曲が当時の全米ヒット曲のタイトルを織り込んだもののため(それぞれカッコ内がミュージシャン)。逆に田島は、そこをわかって訳しているわけだ。

他にも、「Lonely Teardrop」(ジャッキー・ウィルソン)、「A Fool Such As I」(エルヴィス・プレスリー)というのもあるのだが、前者は「小雨はじく窓が頬に冷たい」と訳し、後者は巧妙に訳を避けている(「もぐりこむベッドで」のところ)。

また田島は、音羽たかしの先駆を使いまわしていたりもする。サビ&タイトルの「恋の片道切符」はもちろんなのだが、「ただただ涙」のところなどは、音羽訳をそのまま使っている。*2

'Choo Choo Train'とは、ZOOEXILEのアレではなく、choo choo が「しゅっぽ、しゅっぽ」の英語の擬態語なのだそうだ。実際この曲、キャロル・キングの「ロコモーション」と並んで、機関車の情感が溢れた素敵な1曲である。


3.タッチ・ミー (TOUCH ME / The Doors)

The Soft Parade『Soft Parade』

オリジナル曲について

ドアーズは、1960年代後半に活躍したロックバンド。1966年、『The Doors』により颯爽とロック界に現れ、ヴォーカル、ジム・モリソンのカリスマ性と1971年7月3日の謎の急死により、伝説のバンドとなった…が、実はその後ジム抜きで2枚のアルバムを出したのは案外有名な話(それらがほとんど無視されていることも含めて)。

なお、デビュー時にベースがいなかったのはオリジナル・ラヴと一緒(笑)。ただし、オリジナル・ラヴは井上トミオがサポートしていたが、ドアーズはギターとオルガンが代用していて、本当に存在していなかった。1969年発表、ということはほとんど後期のこの曲では、すでにサポートメンバーが入っているのか、ちゃんとベースが聞こえる。

この曲は、ドアーズのシングルでもヒットした方の曲で、今でもFMラジオではよくかかる曲だ。アルバム『Soft Parade』に収録されるが、そっちのアルバムは自分も聴いたことがない、というくらい地味なアルバム。

1991年、オリヴァー・ストーンという有名な映画監督の手により、伝記映画も作られた。というか、自分が最初にドアーズを知ったのは、実はこの映画を観に連れて行かれたこと(音楽的な師匠に当たる友人に)からだった。江戸川乱歩みたいに10年周期で再評価されるのだそうだ。

ドアーズ [DVD]

ちなみに、このアルバム製作中の田島の一言。

──では、もうすこし時間に余裕のある方に、
さらにあと数枚、番長の推薦CDを。
田島  うーん。
いま、オレの好きな音楽、ということでもいい?


──はい、どうぞ。
田島  じゃ、ドアーズかな。
ドアーズのファーストアルバム
「ドアーズ」がいいよ。

ほぼ日刊イトイ新聞 - 田島貴男のオレのニュース。

田島の威を借りるわけではないが、『The Doors』はマジおすすめである。「どれか1枚」というなら、ぜひこれ。

ハートに火をつけて

原詞

http://www.lyricsfreak.com/d/doors/touch+me_20042756.html

田島の訳詞・アレンジ

青い鳥」に次いで原曲に忠実なアレンジ。ホーンセクション、ストリングスなど、ほぼ完コピ。イントロの「ワオ!」もちゃんとやってる(強いて言えば、オリジナルではエンディングになにか呟いているのだが、それを再現していないくらい)。

とりわけ、冒頭の「カモンカモンカモン」は、本家ジムも真っ青の迫力だ(笑)。ロック界指折りの低音系のヴォーカリストを、J-POP界随一の低音系である田島貴男がこの曲をカヴァーすると知ったときはゾクゾクしたものだが、実際に聞いてみたらその誇張具合に爆笑してしまった(失礼)。

「I'm gonna love you」が「あーいしつづける」と、韻を考えているのは見事なところ。「You and I」が「ふたりで」とシンプルなのも◎。この訳はラクだったのかもしれないが、シンプルだけに訳詞の出来も見事と思う。

4.きみのとりこ (YOU'VE REALLY GOT A HOLD ON ME / Smokey Robinson & The Miracles)

Early Classics『Early Classics』

オリジナル曲について

スモーキー・ロビンソンは、もともと「ミラクルズ」の名前で1959年にデビューした。モータウンの契約第1号アーティストである。1961年からは、スモーキー自身がモータウンの副社長となる。1曲目のフォー・トップスや、ザ・テンプテーションなどにも曲を提供し、名実共にモータウンの看板ミュージシャンであった。

ミラクルズは1965年にスモーキー・ロビンソン&ミラクルズと改名…ということは、1962年発表のこの曲は、本来は「ミラクルズ」名義の曲である。しかし、スモーキー・ロビンソンの活躍から考えて、ミラクルズといえば彼の名前を出さざるを得ないようである。

どうでもいいのだが、YOSHII ROBINSONは、やっぱり彼の名前から取ったのであろうか?

原詞

http://www.links2love.com/love_lyrics_355.htm

田島の訳詞・アレンジ

スモーキー・ロビンソンの最大の魅力は、なんといってもその癒し声である。ダレがなんと言おうと、この曲の田島は、ガナリ声でその魅力をぶち壊している。そのぶち壊しが、創造のための破壊なのかどうかは、さておき。

「I don't like you but I need you」を「君を嫌いになりたいよ」と訳したあたりは、田島も自画自賛していたのだが、実際、見事な訳である。元の歌詞がシンプルなだけに、田島の訳詞が光る曲である。題名をはじめ、歌詞カードでもほとんど「ひらがな」が多用されているのも、そのシンプルさの表現なのだろう。

なお「きみのとりこ」は、ビートルズにもそういう曲があるらしい。らしい、というのは、それを聴いたことがないので。

[補筆]

yokoさんにコメント欄でフォローいただいたが、この曲は The Beatles の 'YOU'VE REALLY GOT A HOLD ON ME'(アルバム"With the Beatles")のカヴァーである。ビートルズは翻訳の許可が一切下りなかったので、ビートルズがカヴァーした曲をカヴァーした、と田島本人がライヴで言っていた。

With the Beatles

5.さよなら ルビーチューズデイ (RUBY TUESDAY / The Rolling Stones)

Between the Buttons『Between the Button』

オリジナル曲について

ザ・ローリング・ストーンズは、1963年デビューの、ロック界最古のバンドのひとつ。ヴォーカルのミック・ジャガーは、日本語でも洒落にもなるくらい有名(…肉じゃが)で、ギターのキース・リチャーズも、音楽好きならば名前は聞いたことがあるだろう*3

しかし、このバンドのなりそめは、ブライアン・ジョーンズという男が「ブルースのカバーバンドをやろうぜ!」と言ったことにあった。彼がそもそもバンドのリーダーだったのだ。だがその後、ジャガー/リチャーズの2人がプロデューサーに首根っこを掴まれてオリジナル曲を作るようになり、それが「サティスファクション」などで成功を収めると、ブライアンはだんだん居場所がなくなってしまい、ドラック浸りの日々となってしまう。そしてついに1969年バンドを脱退。しかしその数日後の7月3日(ジム・モリソンと同じ日付!)、謎の死を遂げてしまった。

「ルビー・チューズデイ」は、そのブライアンの曲(クレジットはJagger and Richards)で、1967年にシングルで発売された(なお、B面は「夜をぶっとばせ」こと'Let's Spent the Night Together')。ブライアンが弾くメロトロンが哀しくも優しく響く1曲。ストーンズを代表する名バラードである。

原詞

http://www.lyricsfreak.com/r/rolling+stones/ruby+tuesday_20117876.html

http://yokohama.cool.ne.jp/iw7glitterz/ruby_tuesday.html

田島の訳詞・アレンジ

その「名バラード」に、挑戦的なくらいの無骨なアレンジ。オリジナルは、先のメロトロンやらフルートやらが入っていて、ミック・ジャガーのサル顔が信じられないくらい、もっと美しく優しく柔らかく、胸が切なくなる曲だ。こんなに暗い感じはしないんだけど、オリジナルはメジャーコードで、この曲はマイナーコードに変えている??(聴ける耳がないので断定できませんが)。もし、この曲に「ニヒルでかっこいいねぇ」とだけ思っている人がいたら、ぜひオリジナルを聴いていただきたい!

てなわけで、個人的には大嫌いなアレンジなのだが、訳詞は悔しいが素晴らしい。ミックのインテリさもちゃんと滲ませているし(「人生は無常かい?」のあたりとか)。「who could hang a name on you」が「みんな分からないのさ」というあたりは、「名前」という訳詞が出なかった時点で驚いたが、本当に上手いなぁと思った。逃げ方、というか、ちゃんと歌に乗せる歌詞を作るという点で、ここは苦労したろうな、と思った。

そういえば、なんでルビーの火曜日なんだろう?と調べてみたが、よくわからなかった(ファンなんてそんなもんです)。その代わり、「"ミック・ジャガー、歌詞を度忘れ「ルビーなんだっけ?」"」という面白い記事を見つけた。

「ルビー」が女の子の名前なのは、たぶん確か。初来日のとき、2体の女性形の巨大バルーンが膨らむ仕掛けをしていたのだが、片っぽが「アンジー」ちゃんで、もう一方が「ルビー」ちゃんだったから。


で、またまた、『キングスロード』製作中の田島の一言。

ストーンズは、好きだね。
肩の力を抜いて聴けるからな。
よく聴くと、歌詞が意外といいのよ。
ミック・ジャガーって文学青年でしょ。
過剰に文学的すぎて匂うときもあるんだけど、
ストーンズがストーンズらしくなったあとの歌詞は

すごくかっこいいんだよ。
RUBY TUESDAY」は、悲しくていいかんじだし

ほぼ日刊イトイ新聞 - 田島貴男のオレのニュース。

6.ダウンタウン (DOWN TOWN / Petula Clark)

(1964年)

Downtown: Best of『Down Town』

オリジナル曲について

1942年デビュー。1958年からフランスでも活動を始め、ヨーロッパ全体で評価を得る。1964年発表のこの「ダウンタウン」で全米に進出、イギリス人女性として初めてビルボートチャートNo1を獲得した。

この曲も、「イギリスのバカラック」と呼ばれたトニー・ハッチの手によるものであり、全盛期はビートルズとチャート争いをした数少ない女性歌手の一人であった。(って、これは、はてなキーワードからのパクリです)

原詞

http://www2.uol.com.br/cante/lyrics/Petula_Clark_-_Downtown.htm

田島の訳詞・アレンジ

キーが高くなっている。だから、田島の低い声でも、元曲の可愛らしさを損なうことがなくなっている。このアレンジは大好き。

訳も、端々に苦労の後が窺える、なかなかの労作。

「Just listen to the music Of the traffic in the city」が「車の往来が奏でるミュージック」とは、元曲に負けずに詩的だねえ。

「夜もやってみる店少しならわかるよ」が「Maybe you know some little places to go to where they never close...」となっているのだが、開いてる店を知っているのは原曲では向こうの方なのかな?(英語よくわからん)

「And you may find somebody kind To help and understand you, someone who is just like you And needs a gentle hand To guide them along. 」が「今夜誰かに出会うかもしれない 助けを必要としてる人 そう あなたに」。日本語の簡約の良さが伝わるいい訳だ。

続く「So Maybe...」が「それじゃ」なのも洒落ている。

「ブラジルのリズム」とは、原曲によればボサノヴァのことであるらしい。てっきりサンバだと思っていた。だいぶ印象が違うな。

それと、調べているうちに見つけた、ちょっとしたウンチク。

(坂本九の「上をむいて歩こう」を)「スキヤキ」と名づけたのは、往年の人気歌手Petura Clarkなんですってね。ふたりがロンドンの中国料理店で食事をしたとき、Kennyが「こんど日本の曲を吹込むことになった。」というと、Peturaが即座に「スキヤキ」というタイトルを提案してくれたんだそうです。Peturaの大ヒット「Down Town」は1964年ですから、多分それ以前の話でしょう。

安倍 寧 Offical Web Site: 2005年08月 アーカイブ

7.青い鳥 (BLUEBIRD / Leon Russell)

Will O' the Wisp『Will O'the Wisp』

オリジナル曲について

この『キングスロード』の中で、唯一シングル初出ではない曲、かつ唯一の70年代の曲。1975年のアルバム『ウィル・オ・ザ・ウスプ』(「鬼火」という意味)の中の1曲。

レオン・ラッセルは、ロックというか、ブルースというか、R&Bというか、ソウルというか、どこに括ったらいいのかよくわからなくなる人だ。

1970年の「ソング・フォー・ユー」が最も有名な曲なのは間違いなく、カーペンターズやダニー・ハサウエイなど多くの伝説的なミュージシャンにカヴァーされている。

原詞

http://www.lyricsdownload.com/leon-russell-blue-bird-lyrics.html

田島の訳詞・アレンジ

この「ブルーバード」を田島がカヴァーした理由は、http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20051129/p2でも引用したとおりで、10年以上前からの念願だったようだ(個人的には「ブルーバード」という新曲も聴きたかったけどね)。

このアルバムの中でも一番忠実なカヴァー。強いて違う点を探せば、微妙なテンポと、中間のコーラスの節回しと、安っぽいシンセサイザーがないことと…と、本当に些細なことしかない。オリジナル・ラヴの新曲だと言っても誰も気づかないだろう、というレヴェルにまで達している。

この曲の訳については、シングル発売時にかつて書いたことがあるので、以下参照。

http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20051203/p1

↑の「蓋を開けてみるとそれが一番よかった…というのは結構よくあるパターンだったりもするから」…って、当たってるじゃん(笑)。幸いだったのは、そのレヴェルがこの1曲だけじゃなかったということかな。

ああ、ひとつだけ書き忘れていたことが。「I'm out in the rain」を「雨を浴びながら」と訳しているところは、ゾクゾクする。このアルバムの訳のなかで、一番ハマったところだと思う。

8.Be My Baby (The Ronettes)

THE BEST OF THE RONETTES『Best of The Ronetts』

オリジナル曲について

ロネッツは、1958年結成。フィル・スペクターに見出され、1963年のこの曲が最大のヒットとなる。

原詞

http://www.metrolyrics.com/lyrics/42259/The_Ronettes/Be_My_Baby

田島の訳詞・アレンジ

今作唯一の日本語訳なしカヴァー。訳自体は完成したのだが、フィル・スペクターが服役中で、その関係で許可が下りなかったとかなんとか(本当か?)。上の日本語版の中古盤が廃盤になっているのは本当で、見つけた店では数千円していた。もし、ブックオフで安く売られていたら買いかも。

この曲には、「あたしのベビー」という邦題が付いていた。しかし、ライヴでのみ披露された日本語訳版では、サビの部分は「Be My Baby」のままで、他の曲のようには使われなかった。*4


9.青年は荒野をめざす (ザ・フォーク・クルセダーズ)

ザ・フォーク・クルセダーズ ゴールデン☆ベスト『ゴールデン☆ベスト』

オリジナル曲について

ザ・フォーク・クルセダーズは、加藤和彦、北山修を中心に1965年に結成されたグループ。1967~8年の1年間しかプロ活動をしていない。「帰ってきたヨッパライ」は、オリコン誌上初のミリオンヒット。1968年のこの曲は、グループ最後のシングルで、グループ解散"後"に発売されている。五木寛之作詞。


原詞

http://www.fk.urban.ne.jp/home/kazuaki3/utagoe-73.htm

(注:音が出ます)

田島の訳詞・アレンジ

今作唯一の日本語曲カヴァー。

イントロは、原曲ではしずしずとしたフォーク風のギターで始まっているところを、オリジナルの要素が強いピアノのアレンジに変えて、力強い印象を与えている。その分、「1番」の後のリズムが早くなる展開部は、原曲よりもインパクトが薄まっている。

なぜフォークルをカヴァーしたのか、明快な理由はどこかで語っていたっけ? 「僕はやっぱり洋楽の人」とか言っていたような気もしたが…。


10.エミリーはプレイガール (EMILY SEE PLAY / Pink Floyd)

ECHOES THE BEST OF PINK F『Echoes』

オリジナル曲について

ピンク・フロイドは、1967年デビュー。この曲は「アーノルド・レーン」に続く2枚目のシングル。これがベスト10ヒットを記録し、続いて出された1stアルバム『夜明けの口笛吹き』がサイケデリックロックの先鋭として高く評価される。(アルバムには収録されず、2種類のベスト盤に収録されている。ここでは完成度の高い『Echoes』を紹介。)

この曲の作曲者でありバンドの中心人物のシド・バレッドは、ドラッグを原因に精神を病んでしまい、セカンドアルバム製作中にバンドを脱退する。突然リーダーを失ったバンドは、サブリーダー的存在だったロジャー・ウォーターズを新たな中心として、その危機を乗り越えていくのであった…。2007年現在、活動休止状態。

原詞

http://www.azlyrics.com/lyrics/pinkfloyd/seeemilyplay.html

田島の訳詞・アレンジ

この曲で田島は、ピンク・フロイドをカヴァーしたというよりは、「狂ったダイアモンド」ことシド・バレットをカヴァーしたかったのではないか。なぜなら、フロイドは聴いたことがあっても、こんなシングル曲までは知らなかったという自分のようなハンパ者は多いだろうし、少なくとも、一般的な「フロイド」のイメージからは遠い曲だ。1stアルバムにさえ入っていない曲なのである。この曲への田島のコメントも、ピンク・フロイドについてではなく、シド・バレットへ対しての内容ばかりだった。

なお、デヴィッド・ボウイも『ピンナップス』でカヴァーしていて、ギターのアレンジなどはそちらを参考にしているようだ。ピンナップス

イントロの、田島自身によるダルシマーは格好よすぎるが、これはオリジナルどおりではない。オリジナルを超えたいいアレンジだ。

逆に、途中の早回しのような幻惑的なシンセの音は、実は非常に忠実なオリジナルのカヴァー。デヴィット・ボウイも、ここは別のアレンジで誤魔化している。ここをはじめて聴いたときは、(先にフロイドは予習したので)あまりの見事さに爆笑してしまった。

シングル発売当時に付けられた「エミリーはプレイガール」という邦題は、よく物笑いの種にもなる「迷訳」なのだが、田島はそこを逆手にとってサビでそのまま歌っている。そのまま歌いたかったのらしい。

***

さて、ピンク・フロイドはその後、『原子心母』『狂気』などをはじめとして、「プログレ」の代表的バンドとして大成功を収める。ちなみに、「プログレッシヴ・ロック」と命名した人物は、『風の歌を聴け』までのエグゼグティヴ・プロデューサー石坂敬一氏であった。1970年『原子心母』のLPの帯にそう書いたのが嚆矢とされる。

シド・バレットは、バンドを脱退はしたものの、ジム・モリソンやブライアン・ジョーンズのように死んでしまうことはなかった。メンバーにさえ消息不明のまま隠遁して生き続けた。イギリスのどこかで、ギター教室を開いていたという話もあったそうだ。

バンドは、常にシドの幻影に纏われながら活動を続けていった。『狂気』で大成功を収めた後の1975年、『あなたがここにいてほしい』というアルバムを出す。「あなた」とは、シドのことであり、このアルバムのレコーディング中に突如スタジオに現れ、メンバーを驚愕させたという逸話もある。このアルバムのメイン曲「狂ったダイアモンド」とはシドのことであり、タイトルチューン「あなたがここにいてほしい」は、胸が狂おしくなるほどの切ないブルースナンバー。

炎?あなたがここにいてほしい?

シドは、去年2006年7月、60歳で逝去した。

その他のカヴァー曲

権利の関係などでボツになったカヴァー曲がいくつかある。わかっている分をまとめておく。

最終的に切った曲
  • The Doors 'Break on throgh'(半分くらい訳した)
許可が下りなかった曲
候補には上がったがやめた曲

*1:タイトルはasin:406149001Xのパクリ。

*2:他にもあったような気がするが、カラオケで歌ったのを覚えているだけなので…。

*3:もちろん個人的には、鼻血が出るくらい大好きなギタリストのひとり

*4http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20060315#BMB参照

2007/02/21(水)

その6『東京 飛行』

| その6『東京 飛行』 - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク その6『東京 飛行』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの6回目。hiroharuさんに負けず劣らず、こちらも実はマイペースです。

今回は2つの点で異例です。まず、前回『ビッグクランチ』をやると宣言しましたが、最新アルバムの『東京 飛行』をやります。

もうひとつは、新譜は発売1年以上経たなければ「マイレヴュー」として「分析」なんてしたくなかったのですが、今回はあえてそれをやります。常々「考えて」聴くなんてことは、すべての四季を通して聴いた上でなければしたくないと思っているのですが、今回は、その禁を破りたくなるほど、書きたいことが吹き出して来ました。

おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点でどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。曲にまつわっているイメージをそのまま書いているのであり、曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

アルバム全体を評価した「オリジナル・ラヴ マイランキング」は、http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20050309を参照してください。

rakuten:book:11926356

一部、ツアーのネタバレもあります。気になる人はツアー後にどうぞ。

全体的な感想

このアルバムの「補助線」を探していた。その一本を引くだけで、問題全体の解答が導き出せるようなものを。

ちなみに『街男 街女』のそれは、「岡本太郎とその克服」だった。前作はそれが直観的にわかったので、このレヴューは今読んでも、大きく印象を外していないと自信を持っている。このくらい決定的な補助線が、このアルバムにもあるはずだと信じて、1ヶ月もの間、いろいろなアルバムを聴いてきた。そしてついに見つけた。

結論を言ってみる。このアルバムのキーワードは、「喪失」である。

こんなこと、発売から2ヶ月も経っているのだからすでに誰かが言っているかもしれない。しかしその間、他人のレビューをシャットアウトしてきたので、自分は知らない。こんなことすでにわかっている人は、以下を読む必要はないでしょう。そのリンク先を、そっとコメント欄で教えてください。

1.ジェンダー

きみは飾ろうとする女

飾りを取ったきみは

薔薇の花の微かな香りに泣いた

こうして文字に起すと、この冒頭の歌詞は見事に詩的である。本当にあの田島貴男の歌詞なんだろうか?と思うくらい。主人公のこの後の運命を、香り付きで想起させるのだから。『キングスロード』で学んだらしい「歌詞の勉強」は、たったこの3行からだけでも成果を窺うことができる。

しかし!歌詞カードを読まないとき、これがまったく伝わらないのが問題。メインとなるリフもかっこいいのだが、歌い方のせいなのか、歌詞が耳に入ってきてくれなかった。発売後1ヶ月後くらいにはじめて歌詞カードを読むまでは、この状態が、呪縛のように付き纏って離れてくれなかった。

欠けている

独りじゃ

半分しか満たされない

足りない

このサビの部分は、まさに「喪失感」たっぷり。さすが、「明日の神話」の後に作られ、このアルバム全体の源泉となっただけのことはある。

しかし、「ジェ、ジェ、ジェンダー」というダサすぎるサビだけは、どうにかならなかったものなのか。この曲、ひいてはアルバム全体に対する悪印象は、まずはそこに由来している。あとは「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」という安直なコール。これも歌詞カードを読むまでは、悪印象の根源だった。

しかし、そのコールの直前の歌詞、

おれにない装置をさあベイビー

取り付けてくれ

ここは言葉がわかってみると実にクールでいいね。少し前に流行っていた「女性は産む機械」みたいな言い回しだ、なんて書いたらちょっと怒られそうだが、あの白痴的な発言とは正反対に、ここでは非常に理知的な香りがする。

2.オセロ

嫉妬でなければ善悪の歌なのかと思っていたが、歌詞を「読んで」みれば、片思いの悶々とした独り狂いの歌だった。

ピエロの役が廻ってきた

という歌詞が印象的で、ここは歌詞カードを読まなくても染み入ってきたが、こんなにも狂おしい意味だったなんてのは、「読む」まではわからなかった。

3.2度目のトリック

冒頭から「なくしたはずの欠片に」と歌っているほど、「喪失」している曲。実は、復縁を望む歌だった。

この「トリック」が「鍵、イリュージョン」で歌われていた、「マジックショー」と同じ意味であるのは、いちいち言うまでもないことだろう。プロモーションヴィデオの刑事ドラマに騙されてはいけない。

4.髑髏

去年亡くなった友人を追悼する歌なのだそうだ。ORIGINAL LOVEのレクイエムといえば、「フィエスタ」そして「アポトーシス」があるが、その中でも一番コミカルな歌だ。終盤が、「DARLIN'」の焼き直しのようだが、なにか関係があるのだろうか?

アナログラジオではじまる構成で、最後がザ・フーのような盛り上がりだそうだ。その盛り上がる部分が、「彼奴」への「なんで逝ってしまったんだよ!?」という理不尽な恨み言からの繋がりであることにも注目。この劇的な構成も、歌詞を読みながらでないとわかりづらいのが難点。

5.カフカの城

きみがぼくを忘れたいま

というメインフレーズ。文句なく、失恋の歌。

必ず何処かで海へ行き詰ってしまう、半分閉塞された状態の「半島」を舞台に持ってきたのは、田島の言語センスの素晴らしいところ。*1

でも、「カフカの城」がどういう処なのかが、不勉強でわからないのが残念。

6.13号室からの眺め

喉が裂けるほど叫びなさい

この命令口調はいい。サディスティックな快感。

13号室は、結局「13枚目のアルバム」からなのだろうか?

7.明日の神話

この曲はこのアルバムの中で最も異質な曲である。

前に、この曲に関しては、こんなことを書いた。

明日の神話」の歌詞のなんとシンプルなことか。この曲の歌詞だけ他の曲とまったくカラーが違う。このアルバムの中で最も最初に書かれた歌詞なのだから、当然なのだが。メロディにぴったりと寄り添う歌詞。自分に馴染みの田島の歌詞だ。

ORIGINAL LOVE - バベルの塔または火星での生活

これは半分当たっていたが、「喪失」というキーワードを通してみたときに不十分な分析だった。

この曲に「喪失」はない。このアルバムの中でこの曲だけが、「実体」を持っているのだ。

「きみ」は現として存在しているし、「たがいに思えば幻じゃなくなる」とまで歌っているのだ。このアルバムの中でも最初にできた曲なのだそうだが、その後にできた曲すべてが「喪失」になってしまっているのは、実に興味深い。

8.ZIGZAG

それなりに前向きなこの曲のどこが「喪失感」なのか。例証は簡単。

手を伸ばしても 星にとどかない

思いめぐらして 手をさぐるよ

彼は何も手にしていない。メッセージソングという、田島にしては異例な曲だと思っていたが、アルバム全体の中ではとくに浮いた曲なのではなかった。

9.夜とアドリブ

他の曲と違ってイメージを繋げただけの歌詞、と田島自らも認めていた。

このアルバムの実質的なタイトル曲であることは言うまでもない。もはやここでは、魂自体が身体から「喪失」しようとしている。

クレモンティーヌ提供曲へのセルフカヴァーなのだが、これは田島の「東京観」の表れなのであろう。これについては、またうまくまとめられたら書いてみたい。「東京っ子」であった自分と、引越し続きで結局「上京」をした田島とでは、東京観が相当に違うことだけを仄めかして。

(補記:http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20070420/p1 で書いてみた。)

10.遊びたがり

まさか、この歌詞の主人公が2人いたなんて! 歌詞を読むまでまったく気づかなかった。

当然、片思いの切ない気持ちを歌った歌なのだが、これは「セレナーデ」に通じるものがある。君を愛したことについての感謝の気持ちの告白。この切なさが、「喪失」というネガティヴになりがちなテーマを、最後で見事に爽やかさにひっくり返している。それこそオセロのように。

今回のツアーで「セレナーデ」を取り上げたのは、けだし、この曲からのインスパイアなのだろう。「セレナーデ」で締めくくっているからこそ『結晶』は傑作アルバムであると思っている自分は、そう直観する。

だから本当は、この曲で終わらせたかったのかもしれない。だけど「遊びたがり」という他にいいタイトル(サビ)が浮かばなかったのだろうか? 照れ隠しのように、もう1曲蛇足がつく。

11.エクトプラズム、飛行

今、「蛇足」と書いたが、「夜とアドリブ」がなければ、この曲の存在意味はわからない。纏まりがつかなくなってしまったアルバムの締めくくりのための曲という気がする。ビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリーハーツクラブバンド(リプライズ)」のような感じ。

全体的な感想(リプライズ)

もう「拒絶感」はなくなった。「2度目のトリック」も「13号室からの眺め」も平静な気持ちで聴くことができるようになった。

歌詞は、本当に素晴らしい。一篇の小説を読むような充実感がある。歌詞だけならば、文句なく過去最高の傑作。

しかし、それがエクリチュールなしでは伝わらないということが、このアルバムの致命的な不満点だ。歌詞を「読む」ということで印象が180度変わってしまったアルバムなんて、これがはじめてだ。ずっとオリジナル・ラヴにはサウンドの素晴らしさに主に惹かれていただけに、その分ショックも大きい。

以上はあえて、そのサウンド面を無視して書いてみました。その辺は、過去の感想文を読んでください。

*1:無粋に現実の場所を推定すると能登半島なのだろうか? 蜃気楼が見えるのは富山湾だから。

2006/09/24(日)

 その5『XL』

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「マイレヴュー」シリーズの5回目。ライヴ盤の『XL』についてです。

おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、少しは信憑性を疑ってください。

XL

XL


不気味なジャケットの正体は、スケードボードの裏面。スケーターズロックも視野に入れているという洒落のつもりなのだろうか。

1.ハニー・フレッシュ?

「新鮮な」のfreshではなくて、flesh。「灼熱」の歌詞にも出てくる「肉」という意味の単語。田島的には「ハニーの肉ぅ」という意味になるそうだ。

田島曰く、「スラッシュメタル」のアレンジになっている。もっとも、L?K?Oのターンテーブルのせいで、メタルというよりもミクスチャーの雰囲気になってしまっている。しかし、それは仕方ないことだろう。このあたりが、オリジナル・ラヴのヘヴィの臨界点なのである。これ以上行ってしまっては「ポップス」にならない、というわけなのだろう。個人的には、その一歩を踏み出して欲しかった(つまりは、もっと重くして欲しかった)ものだが、このアレンジも好きだ。当時のライヴでは、昔取った杵柄とばかり(HR/HM好きだったので)、ヘッドバンギングで応えたものだった。

冒頭の「ハニー・フラッシュ」のあとに鳴る一拍のシンバルは、『変身セット』所収の「EX-L」にはなく、この『XL』でしか聴けない。

2.ティラノサウルス

オリジナルのボトルネックのギターを、ラウドなギターに置き換えてしまった、これも轟音系のアレンジ。ギターの音が、恐竜の咆哮のように聞こえるのが面白い。『TV-REX』のジャケットのようなツギハギの恐竜のイメージがする。インチキで安っぽいオルタナティヴ感がいっぱい。腰が軽いというか、薄っぺらい感じ。しかし実際、田島が目指したのもそういうあたりではないか。まさか本気でオルタナをやろうとしたとは思えない。

余談だが、この作品のジャンル分けは、「ロック・オルタナティブ」なのだそうだ。CDの帯に、実際そう記載されている。これは、真に受けるところではなくて、笑うところなのだろうが。

3.ブロンコ

このころのツアーでは、ツアーのたびにアレンジが変わり、いいように弄ばれていたこの曲。「Love, Sick, Devil」ツアーで、大胆なブレイクビーツな味付けになってすごい!と思っていたら、見事このアルバムに収録されることになった。もはや、原曲の泥臭さなど微塵もないのが痛快。このアルバムで一番好き。

この後もしばらく、「ブロンコ」のアレンジは変わり続けた。

4.ペテン師のうた

たぶん、L?K?Oと2人だけの演奏。田島のリズミカルなギターが聴ける。『Summer Love』の方でも讃えたけど、田島のギターは、やっぱり格好いいね。

この後、『ビッグクランチ』のプロモーションで、この2人だけで全国の小さいクラブをまわる「ドサ周りツアー」をやった。たった2人だけなのに、「オリジナル・ラヴ」が成り立っていたことには感動した。その懐の深さ・柔軟さこそは、田島がソロになってもORIGINAL LOVEという名前を捨てなかった理由なのかと思ったものだった。


5.白い嵐

オリジナルよりもいっそう浮遊感が増している。どこか宇宙の彼方からやってきて、目の前を通り過ぎ、また彼方へ去っていくような幽寂とした感じがある。ジム・オルークにプロデュースしてもらったのはこっちか?*1といいたくなるほど。

もっとも、ここで田島が意識したのは、たぶんルー・リードの方なのだろう。「変身」というベストアルバム名も、『トランスフォーマー』(asin:B00008Z6YX)から取られたと思われるから。


6.羽毛とピストル

やっぱりソウルを下敷きにしていたことがよくわかる、肉感的なアレンジ。田島本人も「こっちの方がオリジナルに聞こえるかもしれない」といっていたほど。『L』と『XL』の本質的な違いもそこにあるはずで、『L』で徹底的に排除した肉体性を取り戻したのが、この『XL』なのだろうと思う。もっともその「肉体性」とは、どこか嘘っぽい、中身の感じられない(肉襦袢のような)マッチョ感なんだけど。

アウトロに、インストの演奏が入っているが、これはツアーでも演奏していたので、れっきとしたこの曲の一部と思われる。

7.インソムニア

ここからが、実際のライヴ会場のライヴ収録。1998年12月の赤坂BLITZのライヴから。

巨大なブラインドが閉まっている中を、雅楽を交えたオープニングSEが鳴り響く中を、田島のギターが切り裂いていく。田島は包帯グルグルの格好(包帯マン)をして、この曲を演奏している。アナログ「Honey Flesh」のジャケットは、このときの模様。

イントロが異様に長いのは、天井までブラインドが上がっていくのを待っていたため。

このツアーでは、この日のライヴだけが、アレンジも演奏曲目も違っていた。だから、このイントロだけでは観客も何の曲なんだかサッパリわからない。固唾を呑んで待っていたところ、歌い始めてはじめて「インソムニア」とわかったので、客が「ワァッ」と湧いたたわけ。

歌詞で「CM」の内容が2回同じなのは、もちろん田島の間違い。歌詞間違いは、最近に始まった話ではない。かつて「モグラネグラ」という番組で、メンバーへのインタヴューがあったのだが、「田島くんに望むことは?」という質問に、作詞の木原龍太郎の答えは、「僕の大事な歌詞を間違えないでください」ということだった。

8.大車輪

前曲からうまく繋がっているが、これは編集のワザ。実際のライヴでは、後半に演奏されている。

サンプリングをいかにカヴァーするかがこの曲のアレンジの見せ所だが、サックスが1本だけなので、どうしても薄い感じにはなってしまっているのは残念。でも、『L』のマイレビューでも書いたが、ライヴの方が生き生きする感じのする曲である。

9.ドラキュラ

このライヴではサンプラーを使っているので、冒頭のリフレインはCDのまま。演奏も非常にグルーヴィ。途中から入るパーカッションは、原曲よりもいい。田島のヴォーカルも、デタラメなスキャットがバッチリと決まっている。理想的なライヴアレンジ。

10.ハニー・フラッシュ(Remixed by Buffalo Daughter)

あと2曲は、まあなんというか、オマケだな。

こちらは、バッファロー・ドーターによる「ハニー・フラッシュ」のリミックス。リミックスとは言っても、トラックは録り直し。女子高生が歌う、という曲の内容そのまんまなアレンジだが、そのバカバカしさが結構好き。

11.羽毛とピストル readymade bellissima '99 mix (Remixed by YASUHARU KONISHI)

この曲も、この曲のために田島が歌を録り直しているんだけど、それは「リミックス」なんだろうか?

小西康晴の仕事は、このころから現在に至るまで、良くも悪くも紋切り型となっている。そこは引っかかるが、楽しい曲ではある。

田島もこのアレンジでライヴをやったこともあった。

この曲のあとに、L?K?Oとサックスの松本氏の2人の即興が入っている。「EX-L」では、ラスト2曲のリミックスは収録されていなかったので、「ドラキュラ」の後に入っていた。

ライヴとオリジナル・ラヴ

「CDだけではオリジナル・ラヴの半分しかわからない」、誰かそう言ったようだけど、たしかにそのとおりだと思う。オリジナル・ラヴは、ライヴを見てナンボのものだと思う。生きた歌・演奏の力、田島の奇妙なパフォーマンスが観られるという魅力はもちろんだが、イントロだけでは何の曲かわからないほどアレンジに凝るのが大きな魅力だ。

1997年ごろまでは、年2回ツアーを催していた。アルバム発売直後のライヴは、あまり大きくアレンジを変えず、「お披露目」という意味合いが大きかった。しかし、半年後のツアーでは、最新作の曲でさえ派手にアレンジが変わっていることが多かった。そのアレンジは、大抵の場合、その時点での田島のモードを表現していて、そのまま次のアルバムに繋がることが多かった。最近は、ツアーは年1回になってしまったばかりか、タイトルを付けて1回限りのライヴしかやらないことも多い。しかしそれでも、ライヴをすることで、田島自身も自分のモードを音として再確認しているのだろうと思う。

SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE』は、実はそのような過程で生まれた作品だったといえる。「リミックス」と言いつつもほとんど新録音だったそのアレンジは、1993年の冬ツアーのものを下敷きにしていた。amazonの『XL』で、そんなことを書いたレビューがあるけど、あれ実は、自分だったりして。


XL』の成立過程

XL』は、そんなオリジナル・ラヴがはじめて出した「ライヴ盤」。しかし、通常のライヴ盤のように、会場のライヴをそのまま収めたわけではなかった。『L』発売直後の「Love, Sick, Devil」ツアーの出来が非常に田島の満足のいくものだったらしく、そのメンバー、そのアレンジで新たにライヴ盤を作ったもの。やり直しなし、一発録音のスタジオライヴだった。近作『キングスロード』でも「一発録り」には拘っていたが、実はこのときから始まった習癖だったのだ。

結果的に、フィッシュマンズの『8月の現状』と同じことを、同時期にやっていたことになる。最近、フィッシュマンズと『L』ごろの田島の共通点を感じることが多いのだが、いつかまとめられればいいかも。

閑話休題。その「Love, Sick, Devil」ツアーは、ひとことで言えば、『L』で封じ込めた情動を一気に解放したものだった。内省的な『L』の楽曲が、あまりに大きく変化していることに我々は大いに驚かされ、田島の中で何かが「ふっきれた」のだと知ることができた。田島はそれを「マグロ状態」と形容した。転がっているだけの冷凍マグロのことではない。マグロは、回遊し続けないと酸素を取り入れられずに死んでしまうことにちなんでいる。さすがは理科オタクの田島

このころの田島は、クスリを決め込んでいるのではないか?と心配をしたくなるほど、天然のアドレナリンを出し続け、完全に「躁」の状態に入っていた。「LSD」ツアーを記録しておきたいと思ったのも道理で、『XL』はその時代の貴重なドキュメントであり、スナップショットでもある。


そんな田島は、「プライマル」以来のドラマタイアップのシングル「STARS」を発表し、「デビュー10周年」ということで、"初めての"ベストアルバム『変身』をリリース。限定BOX SET『変身セット』に(『XL』は『変身セット』の中の「EX-L」とほぼ同内容のパッケージに、ラスト2曲のリミックスを付けたものだった)、さらにアナログ盤「Honey Flesh」…という怒涛のリリース攻勢をしかけた。

しかし、「マグロ状態」の田島は、ニューアルバムを出すことなく、そのまま世紀末1999年を駆け抜けてしまった。そして、20世紀最後の年にいよいよ『ビッグクランチ』のリリースとなる。

(マイレビューその6『ビッグクランチ』へ続く、予定)

[追記]実際には「その8」となりました。

http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20070905/myreview

*1:はっぴいえんどのトリビュートで実際にやっているが、そちらはイマイチな結果。

2006/08/14(月)

 その4『Summer Love』

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「マイレヴュー」シリーズの4回目。本当は『XL』の予定だったんですが、気がつけば、夏が終わってしまいそうなので、あわててコンピレーション盤*1の『Summer Love』にします。今やらないと、その機会はまた1年後になってしまうので。


おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、少しは信憑性を疑ってください。

まずは昔話から。

東芝EMIのコンピレーション盤乱発事件

1995年、オリジナル・ラヴは、突如東芝EMIからポニーキャニオンへ移籍した。どういう移籍劇があったのかは、噂さえも漏れることはなかったのだが、それでもその直後の東芝EMIの行動から、ただならぬことがあったらしいことは窺うことができた。東芝EMIが、田島の移籍後第1作『RAINBOW RACE』のリリースに合わせてしたことは、コンピレーション盤の乱発だった。

1995年のディスコグラフィはこのようになっている。

4/26(水) 「夜をぶっとばせ(Brand New Mix)」(東芝EMI・シングル)

4/28(金) 「夢を見る人」(ポニーキャニオン・シングル)

4/28(金) 『The Very Best of ORIGINAL LOVE』(東芝EMI・ベストアルバム)

5/17(水) 『Rainbow Race』(ポニーキャニオン・5thアルバム)

6/28(水) 『Wild Life』(東芝EMI・コンピレーションアルバム)

7/26(水) 『Summer Love』(東芝EMI・コンピレーションアルバム)

12/13(水) 『COLOR CHIPS』(東芝EMI・BOX SET)

上記7作品中、実に5作品が東芝EMIからのリリース。これはかなり異常な事態である。海外ミュージシャンのよくある例から言えば、「契約枚数がかなり残っていた段階で、田島が強引な形で移籍したのではないか???」という想像も可能ではある(繰り返すが、これは何の根拠もない自分の想像であり、噂さえも聞いたことは一切ない)。しかし、何の事情も知らされないファンからしてみれば、東芝EMIのこの行動は「アテツケ」にしか見えなかったのはたしかである。

おかげで新作『RAINBOW RACE』は、それら東芝EMIリリース作品に「埋没」してしまい、どれが新譜なのかパッとはわからない状態になってしまった。あげくは「ORIGINAL LOVEはベスト盤ばっかり」という"神話"まで生まれてしまったものである*2

そういう事情もあってか、この作品はもちろん、移籍後の東芝EMI作品はすべてオフィシャルページのディスコグラフィに載っていない。『RAINBOW RACE』ツアー時には、「最近いろいろリリースされてるみたいですが(笑)」というような田島のMCもあった。

現在からしてみれば、4月から7月にかけての4ヶ月連続のオリジナル・ラヴ作品のリリースなんて、まるで天国のような状況なんだが、本編の『RAINBOW RACE』が出てしまった後になると、今書いたような事情もあったし、正直なところ「まだ出るっスか!?」という苦痛でしかなくなってしまった。

そんな4ヶ月リリースの締めくくりに出された『Summer Love』。1995年といえば猛暑の夏で(まさに「サマージャム'95」fromスチャダラパー)、自分も、モーローとする頭で半ば意地になってレコード屋のレジに向かっていたように覚えている。まわりのORIGINAL LOVEファンでも、ここまでは手を出せず(というより、出さず)にいた人がいっぱいいた。買った次の日、ファン友達にCDを見せたら「え?買っちゃったの?」とクールな視線を送られ、思わぬ一服の涼を得ることができたものだった…。

それにしても、東芝EMI作品のインナーは泣きたくなるくらい貧弱だった。『Very Best』には辛うじて未発表フォトセッションがあったが、『Wild Life』は2,3枚の初出写真を使いまわす程度の内容。この『Summer Love』以降は一片の田島の姿も登場しない。せっかくのBOX SETだった『COLOR CHIPS』に1枚の新フォトさえなかったことは、もう最悪としかいいようがなかった*3。もちろん、田島の姿を見てニタニタする趣味はないのだが、デザインもグラフィックもアルバムの一部、変にプレミアムが付いた伝説の名盤ではないのだから、そういう音以外のところもきちんとして欲しかった。

そういえばこのころは、プロモーションにもしっかりとお金が使われていて(笑)、新曲・新譜のたびにレコード屋にはチラシが出回っていた。『Summer Love』のものも、涼しげな波のジャケットを全面にしたチラシがあって、それを仕事机に貼って満悦していたものだった。

…今、探してスキャンでもしようかとしてみたのだが、どこかへ紛れてしまっていた。お気に入りだったので捨ててはいないはずなのだが(その代わり「夢を見る人」や「Very Best」の販促チラシが出てきた)。で、そのチラシにもあったのだが、「オリジナル・アーティストによるオリジナル・ラヴTシャツ(4種類)プレゼント!」という企画をやっていた。そのうちの一人が、Webが広まり始めていたころにそのデザインをWeb上で公開していて、infoseekやlycos(まだGoogleがなかったころ)でORIGINAL LOVEを検索するとそれが上位に引っかかった、なんて昔話もしてみたり。

聴きたくなるなる『Summer Love

昔話が長くなってしまった(オヤジ化)。そろそろ本題のレヴューを。

結局、10年以上経った今ではほとんど聴かなくなってしまったコンピ盤もあるが、年に数回は必ず取り出して聞き返しているものもある。それがこの『Summer Love』。これは、上のような事情を差し引いても、いや、そういう事情がなければ出ることはなかったかもしれないことを考えると、その最悪の事態に逆に感謝しなければならないかもしれないほどの「名盤」である。

このアルバムは、桑原茂一氏(詳しくは、はてなのキーワード解説をご参照)の選曲による「リゾート」をテーマとしたORIGINAL LOVEのコンピレーションアルバムである。桑原氏は、「日本音楽選曲家協会」の代表発起人。この協会がどういうものだったのか、未だに知らない。協会には、田島貴男本人も入れられていたようだったが、まさか田島自らが選曲を依頼したものとも思えない。事情はともあれ、その大仰な名前は伊達ではなかった。これほどまで見事なコンピレーションは、なかなか存在しないのではないか。

選曲は、1stアルバムから4thアルバムまでの東芝EMI時代の曲ばかり。そして、シングル曲を1曲も選んでいないのがミソ。1.5級とまでいっては言いすぎだが、シングルにするほどでもないものの、アルバムを聴くときに核として聴くような曲ばかりを見事にチョイスしている。実際、このアルバムの曲は、すべて筆者個人の大好きな曲ばかり! それを、絶妙としか言いようのない、緩急を自在に使い分けた並べ方をしている。


 (いつもの「マイ・レヴュー」のように、1曲1曲取り上げることはやめときます。冗長になりすぎるし、それぞれのアルバムのレヴューのときに書くことがなくなってしまうので(笑)。)

1曲目のスローな「Deeper」から、「スクランブル」がスルッと滑り込んでくるオープニングは、それだけでご飯3杯モノ。この部分にやられてしまって、オリジナル・ラヴというバンドの知識を一切なくこのアルバムを買ったのに、そのままオリジナル・ラヴのファンになってしまったという猛者が、昔購読していたメーリングリストの中にいた。それもよくわかる話である。

そこから「Sleepin' Beauty」へと自然に繋いで、「Sweat and Sugar Night」で1回落とす。ダルい熱帯夜を過ごして一転、「灼熱」で太陽全開。「時差を駆ける想い」でブラジルまでひとっ跳び。そしてまた「Without You」のレゲエでクールダウン。

そして次の部分が、このアルバムのハイライト。「Without You」でクールになったところで刻まれる「愛のサーキット」のイントロのギター! オリジナル収録の『結晶』内でも浮きまくっていたポジションの難しいこの曲を、こんなに見事にこんなに自然に処理するなんて、これは神業である。

そうしてクレイジーになった頭をメランコリーに溶かしてくれるのが、次の「二つの手のように」。この繋ぎも見事というほかない。そして、イントロで予告されていた「Deeper」がようやく全曲でリフレイン。その熱い夜の余韻を「フレンズ」で爽やかに覚ましたあと、ラテンのリズムの「心」でフィナーレを迎える。

こうして熱っぽく書いても、この選曲の見事さを伝えることは難しい。文章力の問題だけではなくて、実際の音を聞いてもらわないとならないからだ。曲間には「波の音」が差し挟まれていて、それも波のリズムをちゃんと考えた編集がなされている。その絶妙な「間」が、各曲の個性の違いを見事にクッションしてくれているのだ。とくに「4.Sweat and Sugar Night」「7.Without You」「10.Deeper」の曲前の波の音の入れ方は、悶絶モノである。

曲間に波の音を挟む、たったそれだけのアイデアで、出来上がった作品は、ORIGINAL LOVEのあまり照らされなかった一面を抉り出すことに成功している。東芝EMI時代のORIGINAL LOVEは、たしかに「夏」のイメージが強かったが(今となっては昔の話ですな)、それはたとえば「サンシャイン・ロマンス」のような、派手でギラギラした「熱」のイメージ。一方で、当時からもアルバム内では、バラードを中心にメランコリーな曲調のものは多く、ここで表に曝け出されたものは、そういう隠れた「涼」のイメージだった。

たぶん、桑原氏は、ORIGINAL LOVEの熱烈なファンでは"ない"のだと思う。ファンだったら、もっと私情が絡んで、シングルばっかりだとか変な曲ばっかりだとかのような偏った選曲になると思うのだ。4枚のアルバムを、まっさらな視線で見つめて並べ替えた、「仕事」という形容が当てはまる徹底的にクールな作業。出てきた結果は、「リゾート向け」というあまりORIGINAL LOVEらしくない顔だったのだが、これもまた、紛れもなくORIGINAL LOVEの持っていた一面なのであった。

ギタリスト田島貴男

それにしても、このアルバムを聴くと、左チャンネルのギターの音色が心地いい。『風の歌を聴け』から4曲も選ばれていて、それがアルバム全体に広げられているからなのだろう。

東芝EMI時代のORIGINAL LOVEのギタリストといえば、村山孝志だったわけだが、『風の歌』の前に脱退してしまったので、そのアルバムからの曲ならば、田島自身のギタープレイを存分に楽しむことができるわけだ。田島は、作曲家、プロデューサー、歌手、パフォーマンスなどいろんな顔が語られるが、プレイヤーとしての彼が語られることが一番少ない。しかし、『風の歌』のラテンまるだしのダンサブルなギタープレイは、もっともっと語られてもいいと思う。…といっても、ギタープレイの語彙をほとんど持たない自分にそれは難しいので、ぜひだれかに絶賛してほしいものです。

とくに、「二つの手のように」のソロギターが、とにかく好き。短くてシンプルだけど、すごく優しくて切ない気持ちになる。たしか「Two Vibration」の自曲解説で、「(その時点で)ギターソロを取ったのは(「Two Vibration」の)他に1曲しかない」と言っていたけれど、たぶんこれなんだろうと信じている。

それと、「灼熱」のギターは、たぶん村山さんだよね? あのリズムギターも鼻血が出るほど格好いいのだが、まさか田島なんだろうか?

最近の田島は、『キングスロード』でもそうだったが、またギタープレイが多くなってきたので、次のアルバムでも大いに楽しみ。やっぱさー、田島はピアノとかサックスとかトランペットなんかに浮気してる場合じゃないのよー、なんて批判めいたことを調子に乗って滑らせると、また怒られそうなのでやめとく。*4

*1:拙企画「マイレヴュー」はオリジナル・ラヴの全レコード(シングルはもちろん、アナログも含む)を取り上げていく予定です。

*2:その原因は、事実上のリミックス盤である『Sunny Side of ORIGINAL LOVE』を「ベスト盤」と銘打ってしまったこともあるのだろうが…。なお、過去音源を直接収録した「ベスト盤」で、かつ田島が監修したものは、全ディスコグラフィ内でも『変身』1作しかない

*3:実際『COLOR CHIPS』は、いずれレヴューをすることになると思うが、コレクターでもなければ、まったく買う必要のない内容である。

*4:ギター以外の楽器をやること自体は、なんもイヤじゃないです。楽曲の幅も広がったし、イイコトヅクメ。念のため。