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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード

IDを変え、引越しました。 現在は https://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/ です。

2006/09/24 (日)

[] その5『XL その5『[[XL]]』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

「マイレヴュー」シリーズの5回目。ライヴ盤の『XL』についてです。

おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点で、自分にどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。昔話が多いのは、曲にまつわっているイメージをそのまま書いているからであって、各曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、少しは信憑性を疑ってください。

XL

XL


不気味なジャケットの正体は、スケードボードの裏面。スケーターズロックも視野に入れているという洒落のつもりなのだろうか。

1.ハニー・フレッシュ?

「新鮮な」のfreshではなくて、flesh。「灼熱」の歌詞にも出てくる「肉」という意味の単語。田島的には「ハニーの肉ぅ」という意味になるそうだ。

田島曰く、「スラッシュメタル」のアレンジになっている。もっとも、L?K?Oのターンテーブルのせいで、メタルというよりもミクスチャーの雰囲気になってしまっている。しかし、それは仕方ないことだろう。このあたりが、オリジナル・ラヴのヘヴィの臨界点なのである。これ以上行ってしまっては「ポップス」にならない、というわけなのだろう。個人的には、その一歩を踏み出して欲しかった(つまりは、もっと重くして欲しかった)ものだが、このアレンジも好きだ。当時のライヴでは、昔取った杵柄とばかり(HR/HM好きだったので)、ヘッドバンギングで応えたものだった。

冒頭の「ハニー・フラッシュ」のあとに鳴る一拍のシンバルは、『変身セット』所収の「EX-L」にはなく、この『XL』でしか聴けない。

2.ティラノサウルス

オリジナルのボトルネックのギターを、ラウドなギターに置き換えてしまった、これも轟音系のアレンジ。ギターの音が、恐竜の咆哮のように聞こえるのが面白い。『TV-REX』のジャケットのようなツギハギの恐竜のイメージがする。インチキで安っぽいオルタナティヴ感がいっぱい。腰が軽いというか、薄っぺらい感じ。しかし実際、田島が目指したのもそういうあたりではないか。まさか本気でオルタナをやろうとしたとは思えない。

余談だが、この作品のジャンル分けは、「ロック・オルタナティブ」なのだそうだ。CDの帯に、実際そう記載されている。これは、真に受けるところではなくて、笑うところなのだろうが。

3.ブロンコ

このころのツアーでは、ツアーのたびにアレンジが変わり、いいように弄ばれていたこの曲。「Love, Sick, Devil」ツアーで、大胆なブレイクビーツな味付けになってすごい!と思っていたら、見事このアルバムに収録されることになった。もはや、原曲の泥臭さなど微塵もないのが痛快。このアルバムで一番好き。

この後もしばらく、「ブロンコ」のアレンジは変わり続けた。

4.ペテン師のうた

たぶん、L?K?Oと2人だけの演奏。田島のリズミカルなギターが聴ける。『Summer Love』の方でも讃えたけど、田島のギターは、やっぱり格好いいね。

この後、『ビッグクランチ』のプロモーションで、この2人だけで全国の小さいクラブをまわる「ドサ周りツアー」をやった。たった2人だけなのに、「オリジナル・ラヴ」が成り立っていたことには感動した。その懐の深さ・柔軟さこそは、田島がソロになってもORIGINAL LOVEという名前を捨てなかった理由なのかと思ったものだった。


5.白い嵐

オリジナルよりもいっそう浮遊感が増している。どこか宇宙の彼方からやってきて、目の前を通り過ぎ、また彼方へ去っていくような幽寂とした感じがある。ジム・オルークにプロデュースしてもらったのはこっちか?*1といいたくなるほど。

もっとも、ここで田島が意識したのは、たぶんルー・リードの方なのだろう。「変身」というベストアルバム名も、『トランスフォーマー』(asin:B00008Z6YX)から取られたと思われるから。


6.羽毛とピストル

やっぱりソウルを下敷きにしていたことがよくわかる、肉感的なアレンジ。田島本人も「こっちの方がオリジナルに聞こえるかもしれない」といっていたほど。『L』と『XL』の本質的な違いもそこにあるはずで、『L』で徹底的に排除した肉体性を取り戻したのが、この『XL』なのだろうと思う。もっともその「肉体性」とは、どこか嘘っぽい、中身の感じられない(肉襦袢のような)マッチョ感なんだけど。

アウトロに、インストの演奏が入っているが、これはツアーでも演奏していたので、れっきとしたこの曲の一部と思われる。

7.インソムニア

ここからが、実際のライヴ会場のライヴ収録。1998年12月の赤坂BLITZのライヴから。

巨大なブラインドが閉まっている中を、雅楽を交えたオープニングSEが鳴り響く中を、田島のギターが切り裂いていく。田島は包帯グルグルの格好(包帯マン)をして、この曲を演奏している。アナログ「Honey Flesh」のジャケットは、このときの模様。

イントロが異様に長いのは、天井までブラインドが上がっていくのを待っていたため。

このツアーでは、この日のライヴだけが、アレンジも演奏曲目も違っていた。だから、このイントロだけでは観客も何の曲なんだかサッパリわからない。固唾を呑んで待っていたところ、歌い始めてはじめて「インソムニア」とわかったので、客が「ワァッ」と湧いたたわけ。

歌詞で「CM」の内容が2回同じなのは、もちろん田島の間違い。歌詞間違いは、最近に始まった話ではない。かつて「モグラネグラ」という番組で、メンバーへのインタヴューがあったのだが、「田島くんに望むことは?」という質問に、作詞の木原龍太郎の答えは、「僕の大事な歌詞を間違えないでください」ということだった。

8.大車輪

前曲からうまく繋がっているが、これは編集のワザ。実際のライヴでは、後半に演奏されている。

サンプリングをいかにカヴァーするかがこの曲のアレンジの見せ所だが、サックスが1本だけなので、どうしても薄い感じにはなってしまっているのは残念。でも、『L』のマイレビューでも書いたが、ライヴの方が生き生きする感じのする曲である。

9.ドラキュラ

このライヴではサンプラーを使っているので、冒頭のリフレインはCDのまま。演奏も非常にグルーヴィ。途中から入るパーカッションは、原曲よりもいい。田島のヴォーカルも、デタラメなスキャットがバッチリと決まっている。理想的なライヴアレンジ。

10.ハニー・フラッシュ(Remixed by Buffalo Daughter)

あと2曲は、まあなんというか、オマケだな。

こちらは、バッファロー・ドーターによる「ハニー・フラッシュ」のリミックス。リミックスとは言っても、トラックは録り直し。女子高生が歌う、という曲の内容そのまんまなアレンジだが、そのバカバカしさが結構好き。

11.羽毛とピストル readymade bellissima '99 mix (Remixed by YASUHARU KONISHI)

この曲も、この曲のために田島が歌を録り直しているんだけど、それは「リミックス」なんだろうか?

小西康晴の仕事は、このころから現在に至るまで、良くも悪くも紋切り型となっている。そこは引っかかるが、楽しい曲ではある。

田島もこのアレンジでライヴをやったこともあった。

この曲のあとに、L?K?Oとサックスの松本氏の2人の即興が入っている。「EX-L」では、ラスト2曲のリミックスは収録されていなかったので、「ドラキュラ」の後に入っていた。

ライヴとオリジナル・ラヴ

「CDだけではオリジナル・ラヴの半分しかわからない」、誰かそう言ったようだけど、たしかにそのとおりだと思う。オリジナル・ラヴは、ライヴを見てナンボのものだと思う。生きた歌・演奏の力、田島の奇妙なパフォーマンスが観られるという魅力はもちろんだが、イントロだけでは何の曲かわからないほどアレンジに凝るのが大きな魅力だ。

1997年ごろまでは、年2回ツアーを催していた。アルバム発売直後のライヴは、あまり大きくアレンジを変えず、「お披露目」という意味合いが大きかった。しかし、半年後のツアーでは、最新作の曲でさえ派手にアレンジが変わっていることが多かった。そのアレンジは、大抵の場合、その時点での田島のモードを表現していて、そのまま次のアルバムに繋がることが多かった。最近は、ツアーは年1回になってしまったばかりか、タイトルを付けて1回限りのライヴしかやらないことも多い。しかしそれでも、ライヴをすることで、田島自身も自分のモードを音として再確認しているのだろうと思う。

SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE』は、実はそのような過程で生まれた作品だったといえる。「リミックス」と言いつつもほとんど新録音だったそのアレンジは、1993年の冬ツアーのものを下敷きにしていた。amazonの『XL』で、そんなことを書いたレビューがあるけど、あれ実は、自分だったりして。


XL』の成立過程

XL』は、そんなオリジナル・ラヴがはじめて出した「ライヴ盤」。しかし、通常のライヴ盤のように、会場のライヴをそのまま収めたわけではなかった。『L』発売直後の「Love, Sick, Devil」ツアーの出来が非常に田島の満足のいくものだったらしく、そのメンバー、そのアレンジで新たにライヴ盤を作ったもの。やり直しなし、一発録音のスタジオライヴだった。近作『キングスロード』でも「一発録り」には拘っていたが、実はこのときから始まった習癖だったのだ。

結果的に、フィッシュマンズの『8月の現状』と同じことを、同時期にやっていたことになる。最近、フィッシュマンズと『L』ごろの田島の共通点を感じることが多いのだが、いつかまとめられればいいかも。

閑話休題。その「Love, Sick, Devil」ツアーは、ひとことで言えば、『L』で封じ込めた情動を一気に解放したものだった。内省的な『L』の楽曲が、あまりに大きく変化していることに我々は大いに驚かされ、田島の中で何かが「ふっきれた」のだと知ることができた。田島はそれを「マグロ状態」と形容した。転がっているだけの冷凍マグロのことではない。マグロは、回遊し続けないと酸素を取り入れられずに死んでしまうことにちなんでいる。さすがは理科オタクの田島

このころの田島は、クスリを決め込んでいるのではないか?と心配をしたくなるほど、天然のアドレナリンを出し続け、完全に「躁」の状態に入っていた。「LSD」ツアーを記録しておきたいと思ったのも道理で、『XL』はその時代の貴重なドキュメントであり、スナップショットでもある。


そんな田島は、「プライマル」以来のドラマタイアップのシングル「STARS」を発表し、「デビュー10周年」ということで、"初めての"ベストアルバム『変身』をリリース。限定BOX SET『変身セット』に(『XL』は『変身セット』の中の「EX-L」とほぼ同内容のパッケージに、ラスト2曲のリミックスを付けたものだった)、さらにアナログ盤「Honey Flesh」…という怒涛のリリース攻勢をしかけた。

しかし、「マグロ状態」の田島は、ニューアルバムを出すことなく、そのまま世紀末1999年を駆け抜けてしまった。そして、20世紀最後の年にいよいよ『ビッグクランチ』のリリースとなる。

(マイレビューその6『ビッグクランチ』へ続く、予定)

[追記]実際には「その8」となりました。

http://originallove.g.hatena.ne.jp/originalovebeer/20070905/myreview

*1:はっぴいえんどのトリビュートで実際にやっているが、そちらはイマイチな結果。

hiroharuhiroharu2006/09/28 22:06このアルバム、田島の多分に趣味的な、お遊び程度の作品だという認識でしたが、「ハニーフレッシュでヘッドバンギング」という言葉に触発されて、一気にCDウォークマンのボリュームを上げてしまいました。気色良い楽曲が結構並んでいることを再認識です。「ビッグクランチ」の躁状態に突入するあたりの田島の狂おしいほどの喧騒を味わうことが出来ます。40歳越えたらさすがに不可能なはしゃぎ加減でしょうね。「LSDライブ」のハーモニカももう見れないのかも。

「抱きしめたい」、そういえばジム・オルークでしたね。結構好きなアレンジです、個人的には。単に自分のツボに入ってるんでしょうね、きっと。

originalovebeeroriginalovebeer2006/09/29 01:09この作品を聴かないと、『L』と『ビッグクランチ』の間に何があったのかサッパリわからないでしょうね。激動の時代のスナップショット、といったところでしょう。個人的には、『Sunny Side』に匹敵する重要作だと思っています。『EYES』と『風の歌』を繋ぐ意味での。あ、これ本文に書いとけばよかった(笑)。

「抱きしめたい」は、もっと美しいノイズものを期待してしまったのがよくなかったようです。

hiroharuさんの「ビッグクランチ」評に早くトラックバックを送りたいのですが、もうちょっと時間がかかりそうです。

rockcandyrockcandy2006/09/30 02:01『L』と『ビッグクランチ』の間の『XL』が『EYES』と『風の歌』を繋ぐ意味での、『Sunny Side』のような存在であるという意見、なるほどーと頷いてしまいました。
私はこのアルバムを聴いてから『L』と「ブロンコ」が好きになりました。本当にCDでしか「オリジナル・ラヴ」を知らない人には騙されたと思って一度ライブに来て欲しいですね。

originalovebeeroriginalovebeer2006/10/01 16:01『XL』は、ほとんど評価が芳しくないのが残念な1枚です。『Sunny Side』は時代の空気とピッタリあっていたことを考えても、時の流れの残酷さを感じることもあります。

もっともhiroharuさんが「趣味的」というのもわかる話で、自分の趣味と偶々近かったから、比較的馴染みやすかったのだとも思います。

そろそろ、ORIGINAL LOVEも通常の形での「ライヴ盤」を出してみて欲しいものではあります。さらに、過去ライヴからのベストセレクトなんてものだったら、もう最高なんですが。