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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード

IDを変え、引越しました。 現在は https://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/ です。

2007/02/21 (水)

[][]その6『東京 飛行その6『東京 飛行』 - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの6回目。hiroharuさんに負けず劣らず、こちらも実はマイペースです。

今回は2つの点で異例です。まず、前回『ビッグクランチ』をやると宣言しましたが、最新アルバムの『東京 飛行』をやります。

もうひとつは、新譜は発売1年以上経たなければ「マイレヴュー」として「分析」なんてしたくなかったのですが、今回はあえてそれをやります。常々「考えて」聴くなんてことは、すべての四季を通して聴いた上でなければしたくないと思っているのですが、今回は、その禁を破りたくなるほど、書きたいことが吹き出して来ました。

おことわり

実際に曲を聴きながら、思い出すことを思うままに書いています。そして、「今、この時点でどう聴こえるか」ということを主眼にして書いています。曲にまつわっているイメージをそのまま書いているのであり、曲の解説のつもりなのではありません。したがって、いちいち裏を取る作業は省略していますので、信憑性を少しは疑ってください。

アルバム全体を評価した「オリジナル・ラヴ マイランキング」は、http://originallove.g.hatena.ne.jp/originalovebeer/20050309を参照してください。

rakuten:book:11926356

一部、ツアーのネタバレもあります。気になる人はツアー後にどうぞ。

全体的な感想

このアルバムの「補助線」を探していた。その一本を引くだけで、問題全体の解答が導き出せるようなものを。

ちなみに『街男 街女』のそれは、「岡本太郎とその克服」だった。前作はそれが直観的にわかったので、このレヴューは今読んでも、大きく印象を外していないと自信を持っている。このくらい決定的な補助線が、このアルバムにもあるはずだと信じて、1ヶ月もの間、いろいろなアルバムを聴いてきた。そしてついに見つけた。

結論を言ってみる。このアルバムのキーワードは、「喪失」である。

こんなこと、発売から2ヶ月も経っているのだからすでに誰かが言っているかもしれない。しかしその間、他人のレビューをシャットアウトしてきたので、自分は知らない。こんなことすでにわかっている人は、以下を読む必要はないでしょう。そのリンク先を、そっとコメント欄で教えてください。

1.ジェンダー

きみは飾ろうとする女

飾りを取ったきみは

薔薇の花の微かな香りに泣いた

こうして文字に起すと、この冒頭の歌詞は見事に詩的である。本当にあの田島貴男の歌詞なんだろうか?と思うくらい。主人公のこの後の運命を、香り付きで想起させるのだから。『キングスロード』で学んだらしい「歌詞の勉強」は、たったこの3行からだけでも成果を窺うことができる。

しかし!歌詞カードを読まないとき、これがまったく伝わらないのが問題。メインとなるリフもかっこいいのだが、歌い方のせいなのか、歌詞が耳に入ってきてくれなかった。発売後1ヶ月後くらいにはじめて歌詞カードを読むまでは、この状態が、呪縛のように付き纏って離れてくれなかった。

欠けている

独りじゃ

半分しか満たされない

足りない

このサビの部分は、まさに「喪失感」たっぷり。さすが、「明日の神話」の後に作られ、このアルバム全体の源泉となっただけのことはある。

しかし、「ジェ、ジェ、ジェンダー」というダサすぎるサビだけは、どうにかならなかったものなのか。この曲、ひいてはアルバム全体に対する悪印象は、まずはそこに由来している。あとは「ヘイ!ヘイ!ヘイ!ヘイ!」という安直なコール。これも歌詞カードを読むまでは、悪印象の根源だった。

しかし、そのコールの直前の歌詞、

おれにない装置をさあベイビー

取り付けてくれ

ここは言葉がわかってみると実にクールでいいね。少し前に流行っていた「女性は産む機械」みたいな言い回しだ、なんて書いたらちょっと怒られそうだが、あの白痴的な発言とは正反対に、ここでは非常に理知的な香りがする。

2.オセロ

嫉妬でなければ善悪の歌なのかと思っていたが、歌詞を「読んで」みれば、片思いの悶々とした独り狂いの歌だった。

ピエロの役が廻ってきた

という歌詞が印象的で、ここは歌詞カードを読まなくても染み入ってきたが、こんなにも狂おしい意味だったなんてのは、「読む」まではわからなかった。

3.2度目のトリック

冒頭から「なくしたはずの欠片に」と歌っているほど、「喪失」している曲。実は、復縁を望む歌だった。

この「トリック」が「鍵、イリュージョン」で歌われていた、「マジックショー」と同じ意味であるのは、いちいち言うまでもないことだろう。プロモーションヴィデオの刑事ドラマに騙されてはいけない。

4.髑髏

去年亡くなった友人を追悼する歌なのだそうだ。ORIGINAL LOVEレクイエムといえば、「フィエスタ」そして「アポトーシス」があるが、その中でも一番コミカルな歌だ。終盤が、「DARLIN'」の焼き直しのようだが、なにか関係があるのだろうか?

アナログラジオではじまる構成で、最後がザ・フーのような盛り上がりだそうだ。その盛り上がる部分が、「彼奴」への「なんで逝ってしまったんだよ!?」という理不尽な恨み言からの繋がりであることにも注目。この劇的な構成も、歌詞を読みながらでないとわかりづらいのが難点。

5.カフカの城

きみがぼくを忘れたいま

というメインフレーズ。文句なく、失恋の歌。

必ず何処かで海へ行き詰ってしまう、半分閉塞された状態の「半島」を舞台に持ってきたのは、田島の言語センスの素晴らしいところ。*1

でも、「カフカの城」がどういう処なのかが、不勉強でわからないのが残念。

6.13号室からの眺め

喉が裂けるほど叫びなさい

この命令口調はいい。サディスティックな快感。

13号室は、結局「13枚目のアルバム」からなのだろうか?

7.明日の神話

この曲はこのアルバムの中で最も異質な曲である。

前に、この曲に関しては、こんなことを書いた。

明日の神話」の歌詞のなんとシンプルなことか。この曲の歌詞だけ他の曲とまったくカラーが違う。このアルバムの中で最も最初に書かれた歌詞なのだから、当然なのだが。メロディにぴったりと寄り添う歌詞。自分に馴染みの田島の歌詞だ。

ORIGINAL LOVE - バベルの塔または火星での生活

これは半分当たっていたが、「喪失」というキーワードを通してみたときに不十分な分析だった。

この曲に「喪失」はない。このアルバムの中でこの曲だけが、「実体」を持っているのだ。

「きみ」は現として存在しているし、「たがいに思えば幻じゃなくなる」とまで歌っているのだ。このアルバムの中でも最初にできた曲なのだそうだが、その後にできた曲すべてが「喪失」になってしまっているのは、実に興味深い。

8.ZIGZAG

それなりに前向きなこの曲のどこが「喪失感」なのか。例証は簡単。

手を伸ばしても 星にとどかない

思いめぐらして 手をさぐるよ

彼は何も手にしていない。メッセージソングという、田島にしては異例な曲だと思っていたが、アルバム全体の中ではとくに浮いた曲なのではなかった。

9.夜とアドリブ

他の曲と違ってイメージを繋げただけの歌詞、と田島自らも認めていた。

このアルバムの実質的なタイトル曲であることは言うまでもない。もはやここでは、魂自体が身体から「喪失」しようとしている。

クレモンティーヌ提供曲へのセルフカヴァーなのだが、これは田島の「東京観」の表れなのであろう。これについては、またうまくまとめられたら書いてみたい。「東京っ子」であった自分と、引越し続きで結局「上京」をした田島とでは、東京観が相当に違うことだけを仄めかして。

(補記:http://originallove.g.hatena.ne.jp/originalovebeer/20070420/p1 で書いてみた。)

10.遊びたがり

まさか、この歌詞の主人公が2人いたなんて! 歌詞を読むまでまったく気づかなかった。

当然、片思いの切ない気持ちを歌った歌なのだが、これは「セレナーデ」に通じるものがある。君を愛したことについての感謝の気持ちの告白。この切なさが、「喪失」というネガティヴになりがちなテーマを、最後で見事に爽やかさにひっくり返している。それこそオセロのように。

今回のツアーで「セレナーデ」を取り上げたのは、けだし、この曲からのインスパイアなのだろう。「セレナーデ」で締めくくっているからこそ『結晶』は傑作アルバムであると思っている自分は、そう直観する。

だから本当は、この曲で終わらせたかったのかもしれない。だけど「遊びたがり」という他にいいタイトル(サビ)が浮かばなかったのだろうか? 照れ隠しのように、もう1曲蛇足がつく。

11.エクトプラズム、飛行

今、「蛇足」と書いたが、「夜とアドリブ」がなければ、この曲の存在意味はわからない。纏まりがつかなくなってしまったアルバムの締めくくりのための曲という気がする。ビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリーハーツクラブバンド(リプライズ)」のような感じ。

全体的な感想(リプライズ)

もう「拒絶感」はなくなった。「2度目のトリック」も「13号室からの眺め」も平静な気持ちで聴くことができるようになった。

歌詞は、本当に素晴らしい。一篇の小説を読むような充実感がある。歌詞だけならば、文句なく過去最高の傑作。

しかし、それがエクリチュールなしでは伝わらないということが、このアルバムの致命的な不満点だ。歌詞を「読む」ということで印象が180度変わってしまったアルバムなんて、これがはじめてだ。ずっとオリジナル・ラヴにはサウンドの素晴らしさに主に惹かれていただけに、その分ショックも大きい。

以上はあえて、そのサウンド面を無視して書いてみました。その辺は、過去の感想文を読んでください。

*1:無粋に現実の場所を推定すると能登半島なのだろうか? 蜃気楼が見えるのは富山湾だから。