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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード

IDを変え、引越しました。 現在は https://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/ です。

2007/09/07 (金)

[] その8『ビッグクランチ』 第2回(全3回)  その8『ビッグクランチ』 第2回(全3回) - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

全アルバムを改めて聴きなおす「マイレヴュー」シリーズの8回目のその2。長い前置きを終えて、各曲のレヴューです。

ビッグクランチ

ビッグクランチ

目次

  1. 『ビッグクランチ』発売まで~ビッグクランチについて
  2. 「仮想A面」レヴュー (このエントリ)
  3. 「仮想B面」レヴュー


A1.女を捜せ

「タイトルが決まると曲の9割が完成する」というギターウルフのセイジの楽曲作成の影響を強く受けた曲。フランスかどこかの国の捜査官の格言「女を捜せ」というフレーズを、バッファロー・ドーターのムーグ山本の家の本棚より見つけたことからタイトルが決定した。後はL?K?Oと「女を捜すリフ」を探し出すばかりだったという。そうして見つかったリフは、映画「サイコ」からのオカルトチックな音だった。田島曰く、この曲のイメージは以下のとおりである。

密林の中をファシスト達が"女を捜して"匍匐前進しているイメージを元に、L?K?Oとオレ(田島)がサンプリングブレイクビーツを組み合わせて作り上げた、カットアップ・ロックンロール、「女を捜せ」!!

アルバム発売前、'99年の「XXXツアー」では、ライヴのオープニングを飾って衝撃的な初披露となった。ところが実はこの曲、アルバムの中では最後の方にできた曲だった。最初このアルバムは、「地球独楽」からはじまり「地球独楽リプライズ」で終わる予定だったのだが、それではあまりに「怖すぎる!」ということで、導入部(「女を捜せ」)とエンディング(「R&R」)を後から作ったのだそうだ。

冒頭が田島のカウントからはじまる。これはビートルズの『リヴォルヴァー』のオープニングを真似たもの?かどうかはわからないが、このアルバムには随所にビートルズの影響が見られる。


A2.地球独楽

宮沢和史は「時差を駆ける想い」を「地球の自転を音楽にした曲」と評したが、それならばこの曲は「宇宙の回転を音楽にした曲」と言えるだろう。田島の宇宙趣味とラヴソングが完全に一体化している、信じられないスケールの曲だ。

このアルバムで最初に出来た曲。L?K?Oに「おそるおそる」聞かせたところ、ものすごく気に入ってもらえて、アルバム製作に励みが付いたのだそうだ。もし、L?K?Oの反応がイマイチだったら、このアルバムは全然違った形になったのだろうか。

出だしのピアノは、「ホールトーンスケール」という音階。鉄腕アトムのイントロが一番有名な例で、宇宙的な雰囲気が出る音階である。その後「冗談」や「沈黙の薔薇」などにも使われるので、田島には馴染みの音階のように思ってしまうが、最初に使われたのはこの「地球独楽」でだった。

ジャズでよく使われる音階だそうだが、古くはドビュッシーあたりにまで遡るという。田島はなんと、高校時代にギターでドビュッシーのカヴァーをして覚えたのだそうだ。

T「ホールトーンスケールって『地球独楽』のイントロの♪ダダダダダラララ…」

M「そうだね。」

T「あれなんてホールトーンスケール。あれをただダーン!低音と下でバーン!とやるだけみたいな。そうすると凄いドビュッシーっぽくなって。僕ピアノ弾く前ドビュッシーのマネとか言ってホールトーンスケール弾くだけでね、最高気分いいっす(笑)。」

ORIGINAL LOVE presents BURST! #105

このページを読むと、田島はミニマルミュージックにも相当詳しいようだが、そうなると『ムーンストーン』の「Glass」はやっぱりフィリップ・グラスにちなんでいるのかもしれない…とこのネタはまたいずれ。

さて、田島はこの曲を「オリジナル・ラヴ史上最もプログレッシブな曲」と評した。1つの曲の中に、まったくキャラクターの違う2つのメロディが調和した、はっきりとした構成を持っているからだろう。

この曲を聴くと、自分の中で広がるイメージ(妄想ともいう)がある。「スインクバイ航法」と、ビートルズの「A Day In The Life」だ。

スイングバイ航法

惑星探査機などの軌道修正に使われる航法のこと。惑星の重力を利用してスピードの加減もできるという。

http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/swingby_navigation.html

ホールトーンスケールのAメロが、惑星の重力を利用しているプロセスで、中間部のBメロが、宇宙空間を漂っているプロセス、というアナロジーが思い浮かぶ。「冒険王」の「宇宙にただひとり また会える日もあるのかな」というフレーズともイメージが重なってしょうがない。

A Day in the Life

地球独楽」と同じく、2重構造を持った曲である。ジョン・レノンが作曲したメインの曲の間に、ポール・マッカートニーが別に作曲した曲が挟まれている。これは「似ている」という次元ではなくて、田島はハッキリとこの曲を意識していたと思われる。なぜなら、その証拠が曲に刻まれている。「A Day In The Life」では、ジョンのパートからポールのパートへ移るとき、高らかに「目覚ましベル」が鳴り響くのであった。

中間部のピアノのメロディは、田島の作り出したメロディの中でも最上級に値する美しさを持っていると思う。


A3.愛の薬

TLCやディステニーチャイルドのリズムトラックがヒントになった曲。

アルバム製作中の逸話。これが「愛の薬」の元と思われる。

L「今日一曲いい感じに最終段階になったじゃないですか。で、一日聴いてないだけでスゴイことになってたじゃないですか、あの曲。」

T「あれよかったでしょ?『チキテク』。仮タイトルで『チキテク』ってつけてるんですけど。」

L「『チキテク』ヒッドイんですよメチャクチャ。考えらんないですよ。仕事で疲れて帰ってきてアンニュイになってるオーエル(否オリジナルラヴ)の人達がね、『オリジナルラヴ聴いてほっと一休み』ってCDポチって付けた時に、あれがガーって流れてきた時にどういう感じになるのかと思って(笑)。」

T「そうね。」

L「最高にセクシーですよ(爆笑)。」

ORIGINAL LOVE presents BURST! #25

99年の秋にシングルとしてリリースされる話もあったそうだが、結局それはなかった。もしそうなっていたら、『ELEVEN GRAFFITI』以降の「機材主義」を象徴するようなシングルになったはずで、ORIGINAL LOVEに対するパブリックイメージも少し変わったのかもしれない。今聴いても、これほどに「チキテク」が日本のポップス化している曲も少ないのではないか。

低音の歌い出しは、本人も「寺尾聡か」というくらいお気に入りだったようだ。途中に差し挟まれるフランス語は、昔のシャンソンから引用されている。


A4.セックスサファリ問題OK

B3と並んで、発表のときに特に物議を醸した強烈なタイトル。「憧れのサファリ」という女性雑誌の見出しから着想を得たのだという。

冒頭の銅鑼は、田島本人が打ち鳴らしている。ライヴでは、東京公演くらいでしか登場しなかったのが残念。レコードで最初聞いたときは、この瞬間に全身に鳥肌が立って、「これはやっぱり傑作アルバムだ!」と予感したものだった。

間奏のシャウトは、バッファロー・ドーターのムーグ山本。収録は99年の9月ごろ。

新曲聴かせたら、ムーグさん、『これは馬だよ!、パカッパカッパカッだよ!』とか言い出して、あまりにもそれが面白いからっていうんで、それ録りましょう、ってことになって。あれは何回聴いてもムーグさんに聞えないですよ。あまりにも曲に合ってるんで、プロのナレーターみたいな人にやってもらったみたいな感じですね。

ORIGINAL LOVE presents BURST! #28

A5.ショウマン

「生まれて初めて最初から最後までピアノで作った曲」。「地球独楽」の中間部のメロディは、おそらくピアノで作ったものと思われるので、「全部」を作ったのはこの曲が始めてということなのだろう。ピアノを突然購入したのは、98年ごろ。それまではほとんど触ったことがなかったという。

それにしても、「地球独楽」といいこの曲といい、ピアノが生み出す田島メロディは、極上の美しさを持っている。ビートルズの'Let It Be'はなぜ名曲なのか、ということに「いつも使っているギターではなく、使い慣れない楽器でメロディを作ったので『素』がそのまま出たのだろう」と、田島本人が解説していたことがあったのだが、その例に当人も漏れることはなかったというわけだ。

冒頭の効果音は、クジラの鳴き声を逆回転させたもの。ここにもビートルズの影響あり。

ネットのどこかで読んだ話なのだが、付き合い始めたばかりの彼女にORIGINAL LOVEの素晴らしさを知ってもらおうと、勇んでこの曲を聞かせたところ、「盛り上がりのない曲ね」と彼女にバッサリと斬り捨てられて落ち込んだ、という笑い話があった。彼氏には気の毒というほかないが、この彼女もなかなかどうして、正鵠を射ていると思う。なぜならこの曲、全編がサビでできているようなものだから。全部が盛り上がっているということは、逆に言えば起伏がないというわけだ。それだけファンにとっては至福の6分弱である。個人的には、ORIGINAL LOVE最高のバラード。「接吻」や「プライマル」どころではない。「二つの手のように」「アイリス」をも超えてしまった。


曲の最後に聞こえてくるアナログレコードのノイズは、「A面」と「B面」を分ける合図。CDでありながら、アナログの裏表を再現したもので、「仮想A面」「仮想B面」と田島は呼んでいる。「CDを一時停止させて、トイレに行って来るなりお昼ご飯を食べるなりコーヒーブレイクにするなりしただいていて結構」とは田島の弁。

初回盤の仕様が2枚組のようになっている(CDサイズの紙盤が見開きの反対側に綴じられている)のも、アナログ気分を出してもらいたかったからだという。

ということで、このレヴューもここで一時停止します。

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