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バベルの塔または火星での生活 このページをアンテナに追加 RSSフィード



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***このブログでは、「ひとりソウル2017」ツアーのセットリストを掲載しています。「ネタバレ」を気にする方は御注意ください。***
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2011/07/27(水)

15thアルバム『白熱』発売

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白熱

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白熱(初回限定盤)(DVD付)

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2011/07/21(木)

ORIGINAL LOVE『白熱』を聴いて3週間が経った

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オリジナル・ラヴの音楽は新たな境地を迎え、作る曲全てが自然と『ポップス』を奏でることだろう。

すごく曖昧な記憶からの引用なのだが、二見裕志がこんなことを雑誌で書いていた。原典を正確に引用したかったのだが、膨大な雑誌の山の中に埋まってしまった…(無事「発掘」できたら改めて引用します)。

今『白熱』を聴いた耳では「まさにそのとおり!」と思うだろうが、これ実は、10余年前、『ビッグクランチ』のときに言っていたこと。そのときその文章を読んで、「まさにそのとおり!」と膝を打ったので、覚えていた。

白熱

白熱

白熱』をはじめて聴いて、そろそろ1ヶ月が経とうとしている。

ORIGINAL LOVE の新譜はいつも、熱で浮かされたように、それこそ自慰を覚えたサルのように、とめどなく聴き続けるのだが、この感覚も実に4年半ぶりのことだ。ところがまぁ(今だからこそ書くが)前作はそれを受け入れるのにものすごく労力を必要として、ある意味「苦行」のようだったのだが、今回は聴くことがそのまま「歓び」になっている。もちろんそれは、『街男 街女』以来なのだが、こんなに聴くたびにワクワクするのは、それこそ『ビッグクランチ』のとき以来かもしれない(『ムーンストーン』は大好きなアルバムだが、もっと静かな喜びだった)。

全体印象を軽くまとめて…と書き始めたが、やっぱり1曲1曲ごとに書きたいことが溜まっていた。とりあえず、吐き出せることを吐き出してみる。前に書いた「第一印象」は、やっぱり第一印象でしかなくて、前に書いたことと矛盾する点もあり。

続きを読む

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/22 01:46これまたコメント意欲を掻き立てる、素晴らしい「白熱」エントリでした。
良い!「白熱」然り、良いものは「良い」とひとことで伝えるのが一番説得力を持つ気がします。


以下、keyillusionさんのエントリから刺激されて思い浮かんだ雑感を(あまり本文に触れられていませんが、感想はひたすらキリがなくなりそうなので)。

かつて(今も?)代名詞が如く使われていた「スタイリッシュでアダルト」という文脈のオリジナル・ラブへの評価は、間違いとまでは言わないまでも、その魅力を十分に伝える言葉ではなかったように思います。
どちらかといえば、スタイリッシュからはみ出す「汗」や、アダルトから零れたパンクスの「無邪気さ」にこそ、田島貴男という人間の真価という気がします。伊達なのにかわいいんですよね。

ところが「白熱」はこれまでのキャリアで最も「スタイリッシュでアダルト」といえるかもしれません。
それは無意味なレッテルとしての「スタイリッシュ」ではなく、試行錯誤した末に到達したであろう軽さ。背伸びして聴く表面的なムード音楽ではなく、音楽から離れてしまった大人を呼び戻す「ティーンのためだけではない」ポップス。
大人という言葉を使わずにはいられない、40代にしか作れない“ただの”ポップス。


>この曲を聴いたときに、ギターの重ね方が「永遠の詩」っぽいな、と頭をよぎったのだが

田島貴男がかつて、60〜70年代のルーツロックにつよいレコ屋でバイトしていたという経験は、彼が書く曲に時折顔を出してきますが、「東京 飛行」から「白熱」リリースまでの間に行われたライブで聴いた新曲群には、そういった年代のロックの影響がかなり顕著に表れていました。
今回は見送りとなった「路上」という曲は、CCRの「雨を見たかい?」をすぐに思い浮かべたし、「ハイビスカス」の原型である「高い枝のクランベリー」は「永遠の詩」を思わせるギターアンサンブルを取り入れた、今よりミディアムテンポの曲だったと記憶しています。keyillusionさんが指摘する通り、その名残りは「ハイビスカス」のイントロなどで聴くことができます。

では「ハイビスカス」が大陸の香り漂う“洋楽”かというと、これがそうでもない。むしろ受ける印象は男っぽい“歌謡曲”と言えるかも。いなたいのにスタイリッシュ。洋にも邦にも転ばない、この辺りのギリギリを行くさじ加減はもはや唯一無二です。
つい最近、ツイッター上で長山洋子の“ハートブレイカー節(博多山笠女節)”を面白がっていましたが、この曲も充分ユーモラスです。

続く「ふたりのギター」も同様に、オリジナル・ラブの歌謡曲。
とはいえ音楽の国生まれの外国人、田島貴男の作る歌謡曲なので、いわゆる「日本人の心に沁みる」といった類いのシケっぽい音にはなりません。やはりどこか洋楽的。
まだまだ様々な角度から、このアルバムを楽しむ方法がありそうですね。


>このアルバムは、未来を創造するかのような過去が詰まり、過去の道程を辿る未来が感じられる、そんな一枚なのです

この名フレーズ、ジャケの帯に入れたいです。

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/22 01:50>アダルトから零れたパンクスの「無邪気さ」にこそ

→アダルトから零れたパンクスの「無邪気さ」こそ

誤字が多くてすみません。

keyillusionkeyillusion2011/07/22 17:38誤字は気にしないでください。「はてな」のコメント欄は、そういう修正ができないインターフェイスなので…(なんとかならんのかな)。

>どちらかといえば、スタイリッシュからはみ出す「汗」や、アダルトから
>零れたパンクスの「無邪気さ」にこそ、田島貴男という人間の真価という
>気がします。伊達なのにかわいいんですよね。

ここですよね。ORIGINAL LOVEにハマるかハマらないかの分水嶺は、ここを受け入れられるかどうかにあると思います。個人的な経験からも、実は初めてのライヴが「オレは渋谷系じゃねえ!」と叫んだ例の伝説の公演だったんですが、アルバムではあんなにスタイリッシュなのにライヴではすごく「バカ」だったそのギャップに、心を撃ち抜かれてしまったわけです。

「路上」はそういう感じの曲だったんですか。
今回のアルバムは、『東京 飛行』をまたいで、やっと『キングスロード』の成果が結実したアルバムなのかもしれませんね。

「洋楽くささ」というのは、ORIGINAL LOVE のアイデンティティのひとつだと思うんですが、それを「スタイリッシュ」というならば、たしかに『白熱』はスタイリッシュなアルバムですね。

>大人という言葉を使わずにはいられない、40代にしか作れない“ただの”ポップス。

うん、今回はそうですね。でも田島はきっと「大人」というキーワードは拒否するのでしょうね。パンクやロックの真髄に一度でも触れた者なら抱くはずの「反体制」。あるの体制に組み入れられようとする瞬間には、すぐに別の方向へ逃げようとする。別の言葉で言えば「天邪鬼」なわけですが(笑)、40代を過ぎたミュージシャンに与えられがちな「円熟」というキーワードからは、きっと逃げ続けるでしょうね。田島は10年前に「ニール・ヤングみたいな爺さんになりたい」と言っていたのですが、サウンド的な話ではなくて、スタンス的な話として、たしかにそういう風になってくれると嬉しいですし、それができる人なのではないかと思います。


ところで、『サウンド&レコーディング』を昨日買いました。「ひとりで全部やってみて、やっぱり音楽は『分業』で作るべきだと思った」と言っていました。バンドスタイルのことではなくて、レコーディングに関する意見ですが、やはり「ひとり」アルバムは今回が最初で最後になるでしょうね。日記によればすでに新しいステップに踏み出しつつあるようですし、今後の展開が非常に楽しみです。

keyillusionkeyillusion2011/07/22 17:45>田島貴男がかつて、60〜70年代のルーツロックにつよいレコ屋でバイトしていたという

そういえば昨日ウチのカミさんと話をしていたのですが、渋谷のHi-Fiってもう閉めてしまったんですか?

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/23 01:10は〜、あの渋公ライブがデビュー戦ですか!やはり縁が深いというかなんというか。


>でも田島はきっと「大人」というキーワードは拒否するのでしょうね。

大人だとか大人の鑑賞に耐えうるロックだとかクソだと思っているでしょうね(笑)。もちろんそういうところが好きなわけですが。

いやしかし、今回ばかりはそういう手垢のついた言葉で修飾したくなる気持ちも理解できるというか、適当な言葉が見当たらないのだけれど、確実に「若さ」という価値以外の新しい表現方法を獲得しているように思いましたね。さりげない言葉の中に、今の年齢でしか伝えられない、本当に胸を打つなにかが含まれていますよね。ハーレーから始まった2輪への好奇心が「バイク」という名曲に結実しているのが素晴らしい。

尖ったままで未だに錆びないニール・ヤングは、ロックのひとつのゴールですよね。今のオリジナル・ラブで、轟音ギターで囁く4ピースとか凄くいいですね。

サンレコを読んで、専門用語の多さだけで「この人すごい」と感心しそうになりました(笑)。
「20年目の宅録」を納得するまで試したいま、どんな形でバンドスタイルに還元されるのかが楽しみです。

ハイファイまだあるはずです。ないのか?今度近くを通ったら確認してみます。

keyillusionkeyillusion2011/07/23 15:45>大人だとか大人の鑑賞に耐えうるロックだとかクソだと思っているでしょうね(笑)。

そうそう!今回のインタヴューでもどっかでこう言ってくれないかな、と密かに期待しています(笑)
たぶん、われわれと同じようなそういう感覚を持たれている方で、もう10年以上のお付き合い(ネットでですが)がある方が、『白熱』のレヴューを新たに書かれていました。SWEET SWEETさんなら琴線に触れる部分があるはずです。
http://www.tokyo-ongaku.com/?p=876

>今のオリジナル・ラブで、轟音ギターで囁く4ピースとか凄くいいですね。

今回の曲たちが、今後どういう風にライヴでアレンジされていくのか、楽しみです。考えてみたら「4ピースで」というのはデビュー前のころ以来となるわけですから、それでまた納得の行くバンドサウンドが完成したら、ライヴアルバムが出るの可能性もありえますね。

>サンレコを読んで、専門用語の多さだけで「この人すごい」と感心しそうになりました

やっぱり「職人」なんですねえ。アウトラインはなんとなくわかりましたが、さすがに個々の機材のことを並べられてもチンプンカンプンでした。
個々の機械は、それを選択した理由などあると思うのですが、サンレコが『ムーンストーン』のころに田島のプライヴェートスタジオを特集した号と比較して、どういう風に変化しているのか、時間があったら検証してみたいです。

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/23 20:03トーキョーオンガクサイト、読ませていただきました。もう「その通りですね!」の連続でした。素敵なサイト(というかお知り合い)を紹介していただき、ありがとうございます。やっぱりドアーズ入ってるよなあ。
みなさんそれぞれの視点や得意分野があるし、個性的なファンの方々の振り幅がそのままオリジナル・ラブの幅なのでしょうね。

>ライヴアルバムが出るの可能性

これはかなり現実味を帯びてきましたね。自分は今のインディーズという形態は賛成なんです。
制作からプロモーションまで、ほぼすべてを自分達の手で請け負わなくてはならないぶん、今まで以上に「売る」ための面白いアイディアを出さざるを得ないと思うんです。
今回の「フリーライド」撮影のように、実験的なアイディアや宣伝方法を試すのは、メジャーレーベルに任せっぱなしだった今までよりも、「トータル」としてのオリジナル・ラブ・ブランドを作り上げていく良いチャンスだと受けとめています。今後ファンクラブが充実していく可能性も多いにあるでしょうしね。充実させなきゃダメ絶対。
なにより、すべてを面白く実験の場にしていくことこそ芸術的であると思うんです。

必然的に、行われたライヴを音源や映像として売り出すのは、制作費諸々の面から言っても、間違いないでしょうね。事務所側とリスナー側の利害が一致する、ナイスな案だと思います。まああんまり制作費の心配するのもどうかと思いますけどね(笑)。


>やっぱり「職人」なんですねえ

「白熱」を聴く前の予想がはずれました。「職人」としての魅力をたっぷり味わえるアルバムでした。しかし本当にマニアックさを見せたがらないよなあ。「オレの知らない音楽をいっぱい知ってる!」という尊敬の仕方をしている身としては、ミュージック・マニアとしての偉大さも、もう少し前面に押し出してくれてもいい気がします。

keyillusionkeyillusion2011/07/25 22:22
メジャーレーベルが巨大企業のサラリーマンなら、インディーズは音楽的な「独立開業」ということですよね。それなりの顧客は掴んでいるからアッサリ閉店…という事態は心配しなくてもいいと思いますが、当人たちにしてみればちょっと大変ですよね。…まぁポニキャンの末期は何もしてくれなかったから、今の方がずっと気が楽なのかも。

ポニキャンが一番プロモーションしてくれたのは、『ビッグクランチ』のときの、L?K?Oと二人きりでのクラブサーキットのころだったと思うのです。あのときのミニライヴは本当によかった。ORIGINAL LOVE がバンド形態に縛られず、自由なユニットとして機能するさまを見せ付けられました。田島はやっぱりライヴがベースなんですよ。だからこそ、今回の『白熱』もあれだけの充実した内容になったのでしょう。そして、今年後半に行うと言う「ひとりソウルショウ」全国ツアーは、ぜひ見られればいいなと思います。

>なにより、すべてを面白く実験の場にしていくことこそ芸術的であると思うんです。

「カミングスーン」で引用した『MARQUEE』では、「『L』のアイデアは『DESIRE』のころからあったが、まわりが許してくれなかった」というようなことを言っています。今回のツアーの「ドラキュラ」や「明日の神話」のアレンジの話を聞くと、田島もやっぱり一度くらいは、そういう実験的、あるいは「観念的」な方向で思う存分やってみたいのかもしれませんね。

>ミュージック・マニアとしての偉大さも、もう少し前面に押し出してくれてもいい気がします。

東芝EMI時代は、彼に付いていけば音楽の先端がわかるような気持ちにさせてくれましたからね。今でも膨大な音楽を聴いているんでしょうが(今は映画の方が多いのか?)、アンテナに触れたところを、『EYES』のころのように、時流の先端のポップスを何の衒いなく出してしまうような、そんな作品もまたこの先、生まれるのかもしれませんね。


それから、トーキョーオンガクサイトが気に入っていただいてよかったです。あそこを読むと、自分が分離して書いたんじゃないか?というような錯覚に陥ることもあります。その一方で、今回の「春のラブバラード」の評価のように正反対になることもあるのが面白いのですが。

rararapocarirararapocari2011/07/26 00:16遅ればせながら、餅屋(笑)です。お褒めの言葉ありがとうございます。
「ハイビスカス」は面白い歌ですよね。自分も、このメロディ大好きです。
今回、自分にとっては苦手曲が皆無という点で、オリジナル・ラブとしてはかなり異例のアルバムです。敢えて苦言を呈するなら3曲目のタイトルくらいですかね。

>(本当はこの曲のアレンジにだけ不満があるのだが、それはまた別の機会に)
自分は、サックスの入る2番のあとのブリッジ部分のドラムが猛烈に気になりますね。
ズンドコアレンジとでも言うべきカッコ悪さがあります。
そうして曲を最初から聴き直すと、ドラムアレンジがおざなりな気がしてきます。
そのあたりでしょうか。
(また別の機会でもかまいません)

keyillusionkeyillusion2011/07/27 12:37そういえば、「苦手曲」がありませんね。「春のラブバラード」が名バラードであることは、論を俟ちません。3曲目のタイトルは、(笑)付きで自分としてはOKです。

>そのあたりでしょうか。

まさにそこです。いろいろと理由を考えていたら、別エントリを立てられそうな感じになってきたので、そちらを待って下さい。

2011/07/01(金)

映画から読み解く「東京 飛行」論 (SWEET SWEETさんの寄稿)

|  映画から読み解く「東京 飛行」論 (SWEET SWEETさんの寄稿) - バベルの塔または火星での生活 を含むブックマーク  映画から読み解く「東京 飛行」論 (SWEET SWEETさんの寄稿) - バベルの塔または火星での生活 のブックマークコメント

SWEET SWEETさんからの寄稿を別エントリとしました。

お読みになったら、ぜひ感想コメントをお願いします。

* * *

予告通り、映画から読み解く「東京 飛行」論、行ってみたいと思います。


まずはじめに。

東京 飛行」についての興味深い考察や議論は、すでにkeyillusionさんのエントリの中で、充分楽しむことができます。

なので、ここでは「映画」というキーワードを元に、暇つぶしのコラム的に、自分なりの切り口で「東京 飛行」の印象をまとめてみたいと思います。もちろん長いです。


東京 飛行」発売時のインタビューのなかで、田島貴男はこのアルバムについて「ロードムービーのようなアルバムかもしれない」と答えていました。

たしかにアルバム全編を通して聴くと、ひとつの繋がった流れがあるように感じます。

映像を喚起させながら1曲ごとに舞台を変えて進んでいき、聴き終わる頃には、どこかからどこかへ移動したような感覚になります。

同じく映画的という意味では「ビッグクランチ」というアルバムもありますが、あちらがなんでもありのド派手なハリウッド感を打ち出していることに比べると、「東京 飛行」はもう少しおとなしい、モノクロのざらついたフィルムと言えるかもしれません。

もしくは、「ビッグクランチ」が全米興行収入No.1だらけのシネマコンプレックス的だとすれば、「東京 飛行」は完全に単館上映。元気なアホらしさは影を潜めています。


では何をもってロードムービーと例えたのでしょう。

ずばり言うと「ジム・ジャームッシュ」だと考えます。


ご存知ない方に説明すると、このジャームッシュという人は、ニューヨークを拠点とするインディーズの映画監督です。権力嫌いの変わり者で知られ、長いこと自分のやり方で好きなように映画を作ってきました。

おもに白黒での撮影を好み、乾いた笑いを交えながら、わりと独自のテンポで展開していくロードムービーを撮っています。

この人を一言で言い表すと、とてもセンスがいい。

アクが強いけれども押し付けがましくない、懐かしいのに新しい、良い意味で自分のペースで撮り続けている、ちょっと変わった男なんです。

ジャームッシュは無類の音楽好きとしても知られていて、映画の中の選曲も抜群ですし、自分の作品にトム・ウェイツやジョン・ルーリーなどのミュージシャンを出演させたりもしています。

ちなみにベスト盤「変身」のスペシャルエディションである「変身セット」に付属されていた「TEN YEARS AFTER」というドキュメンタリー映像は、ジャームッシュが撮った「YEAR OF THE HORSE」というニール・ヤングのドキュメンタリー映画のモロパ・・、オマージュです。

つまりドンズバなんですね。田島さんはジャームッシュが大好きなのでしょう、おそらく。

そりゃあそうです、この人の映画、めっちゃくちゃ面白いんです。田島ファンならばおそらく、洋楽ファンならなおさらアンテナに引っかかる映画監督だと思います。

パーツでいうとまずジャケ写。粗めのモノクロ写真とハット、白いセダン。この雰囲気は「ストレンジャー・ザン・パラダイス」辺りの作品にかなり近い気がします。

「デッドマン」という作品は、無実の罪で追われる身となった男が、胸に銃弾を受け命をなくしながら、死に場所を探して彷徨う物語です。「カフカの城」に登場する男も胸に穴を開けられたまま行くあてもなく彷徨います。似ていませんか(実弾は受けていないでしょうが)。


調子に乗って続けますね。「東京 飛行」のラスト、終わり方には賛否両論あるかと思います。「遊びたがり」で楽しげに終わってもよさそうなものですが、そうはならず「エクトプラズム、飛行」の不穏な空気で幕を閉じます。

これをジャームッシュ縛りで考えてみると、「ナイト・オン・ザ・プラネット」という作品に行き着きます。

5つの都市を舞台に、タクシードライバーと乗客の交流を描いたオムニバスで、各都市の特色が出ていてなかなか面白い映画です。

その中のニューヨーク編は、移民のため英語もダメ運転もダメなドライバーが、黒人の乗客に運転を代わってもらい、立場が逆転したまま噛み合わないままで目的地まで向かうという話で、移民のドライバーがなかなか馴染めない大都会での生活の中で、ほんの少し街(乗客)の温かさに触れるというエンディングを迎えます。

ところがこの物語は笑顔で乗客と別れたあと、ドライバーが街ですれ違うサイレンの光を見つめながら象徴的にフェイドアウトしていきます。とても不穏です。だけれども、ニューヨークという街をよく表しているシーンだとも言えます。流れている音楽はフリージャズ。

東京 飛行」が街の「不在感」を描こうとしたアルバムだとすれば、「エクトプラズム、飛行」で終わるという展開は、みんなが見ないようにしていた、ありのままの姿を描いた結果だったのかもしれませんね。

ジャームッシュ映画の持つモノクロ感、ドライな登場人物、ユーモアのセンスと「東京 飛行」に流れる空気感はかなり近いものを感じます。いや、このニュアンスを落としどころにしたいという、アルバムの全体像が頭の中にあったんじゃないかなあ。


以上です。貴重なスペースを使わせていただき、ありがとうございました。

東京 飛行

東京 飛行

keyillusionkeyillusion2011/07/02 17:43とても面白かったです。

一番ハッとしたところが、「エクトプラズム、飛行」の意味合いに付いて、ちゃんと説明できる視点があるんだな、というところでした。

何も知らない立場から考えていたら、あのフリージャズは、せいぜい「煩悩の音楽」の具現化、くらいの発想しかできませんでした。

実はもうちょっと具体的な意味合いがあって、「東京」という街のカオス感をアルバムに加える、つまりはアルバムにリアリティ(現実感)を与える、という重要な意味があるのですね。

ORIGINAL LOVEの過去の曲で言うと、「冗談」のラストシーンと重なるわけですね。
(そういう意味では、「冗談」は最後はフェードアウトで終わってほしかったなぁ、と今でも思うのですが、「ムーンストーン」のフェードアウトでさえ人力で行った当時の田島にはその発想はなかったのでしょうね)

「TEN YEARS AFTER」にも元ネタがあったとは。考えたらあれ、PVを除いたら唯一の映像作品ですね。

***
大衆を「映画を見る/見ない」で分類するとすれば、自分は明らかに映画を見ない人種なのですが、たぶんその人種としては珍しく、シネコン的な映画よりはミニシアター的な映画の方が好きな人間です。俳優や監督の名前がまったく頭に入ってこないので、「○○の××の最新作!」なんていわれてもまったくピンとこないので、そういうのには興味が湧きません。それよりも、作品それ自体が力を持っているような作品、鑑賞に頭を使わなければならないような映画の方が好みです。(ドキュメンタリー、とくに音楽系のドキュメンタリーが好きです)

ジャームッシュという監督は今回まったく初めて名前を聞きましたが、とても面白そうな世界を持っていそうな人ですね。機会があれば、ぜひ見てみたいと思います(探すの大変そうですが)。

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/02 20:17修正及びご感想ありがとうございます。


>アルバムにリアリティ(現実感)を与える、という重要な意味

不吉なインプロビゼーション「エクトプラズム、飛行」は「東京 飛行」で描かれる架空の東京から現実の東京(というか自分の住む場所)に引き戻す役割があるのかもしれませんね。
サイレン(警鐘)を鳴らす意味でのあの幕引きでしょうね。


しかし、まるで自分の映画に対する考えを聞いているような気分です(笑)。
ジャームッシュ作品は彼のパーソナリティありきの作品ばかりです。表向き、単なる娯楽映画であり教訓を打ち出すタイプでもありません。しかし、とても深い、良い余韻を残す作品ばかりです。おそらくkeyillusionさんの好みからもそう離れてはいないはずです。

「デッドマン」という作品は、主演のジョニー・デップを「ヒット製造機」として扱っておらず、ニール・ヤングが映像を観ながら即興で音をあてた、あらゆる意味で非常に“音楽的”な映画ですので、おすすめしておきます。

インディペンデント映画人気の立役者であり、未だに好きなものだけを撮り続けながら、多くの映画好きに愛されているジャームッシュの活動は、メジャーレーベルから自主レーベルに移った田島貴男のこれからの活動の指針にもなるのでは(希望的観測)。

話が膨らみすぎてしまいそうなので、「冗談」のあの流れを断ち切るようなラストについてはまた別の機会に。

keyillusionkeyillusion2011/07/03 02:45「『冗談』のフェードアウト」というテーマは、そういえば前にも書いたことがあるな、と思っていたのですが、思い出しました。こんなことを書いていました。

http://originallove.g.hatena.ne.jp/keyillusion/20090619

このときはまったく事情を説明せずに綴ったのですが、実はこのとき、私の妻が急病になってしまい、本当に生死の境を彷徨っていたときだったのです。絶望的な「現実」に直面していたときに「冗談」を聴いて、熱に浮かされたように書いた一文なのでした。

このときはたしかに、もしこの曲がフェードアウトしていたら、「混沌」に飲み込まれて、本当に精神的にダメージを受けてしまっていたかもしれません。

今、妻はすっかり元気になっています(今頃『白熱』を遅ればせながら聴いているはずです)。だから今はまた「やっぱりフェードアウトしていれば…」と思うわけです。喉元過ぎればなんとやら、ってやつですね。

SWEET SWEETSWEET SWEET2011/07/03 16:04上記の「冗談」についてのエントリから「ムーンストーン」のレビューまで辿って読ませていただきました。褒めてばかりですが、やはり素晴らしい、抜群に。これを読んでいるみなさんもぜひもう一度。読んでいると確実に聴き返したくなりますもんね。

思い出とその頃よく聴いていた音楽は、深く結びついてしまいますね。
定期的にリリースされていた頃のオリジナル・ラブのアルバムは自分にとっての年表替わりだったりします。

人生の一大事にさえ頭の片隅に流れていたのですね。
そのお話だけで「ムーンストーン」の素晴らしさが伝わるというものです。

keyillusionkeyillusion2011/07/12 01:13SWEET SWEET 2011/07/11

ご報告です。

「白熱」を聴きました。
keyillusionさんのいま現在の「白熱」評はいかなるものでしょうか。ファーストインプレッション以降の手応えが気になっています。

昨日から繰り返し聴いている自分の感想。このアルバムはみんなのもの。夏が来る前に聴くことができて本当によかった。

keyillusionkeyillusion2011/07/21 15:17>SWEET SWEETさん
rararapocariさんがようやくアルバムを手に入れたようなので:-)、そろそろ新しい感想をまとめたいと思っています。27日の発売前には1度まとめたいですね。

聴きこむほどに魅力的なアルバムです。一言で言うと、「オレはこんなアルバムを待っていたんだ!」という感じです。夏の前に出たのは、本当に嬉しいですね。やっぱりORIGINAL LOVEは夏のバンドだと思います(アルバム自体は春の設定のようですが)。