2016/10/29(土)
2016/10/29 札幌 CUBE GARDEN
SET LIST |
- ひとりソウルショウのテーマ
- ゴールデンタイム
- Hey! Space Baby
- BODY FRESHER
- BLUE TALK
- DARLIN'
- きりきり舞いのジャズ
- 髑髏
- サンシャイン日本海
- 線と線
- 四季と歌
- Automatic(宇多田ヒカルのカヴァー)
- 接吻
- フリーライド
- JUMPIN' JACK JIVE
<アンコール>
- 朝日のあたる道
- 希望のバネ
<アンコール>
※他のサイトなどを確認してません。微妙に間違っているかも。
2016/10/29 札幌 CUBE GARDEN
雑感 |
今回はCUBE GARDENという、ライヴハウス。札幌では3年前からずっと「BESSIE HALL」だったが、はじめて別の場所でのひとりソウル。自分も初めて行くライヴハウス。会場が大きくなったのか、はたまた小さくなったのかドキドキだったが、ほとんど同じ大きさのハコだった。BESSIEが抑えられなかっただけかも(笑)。
場所は『EYES』のころにホールライヴをやった「サッポロファクトリーホール」の裏手にあたるのだが、もちろんそんな思い出話などなかった。ただ、新しくてきれいな会場だった(BESSIEは老舗のライヴハウス)ので、音響がよく、MCではそこを褒めていた。
「ひとりソウルショウのテーマ」は、かなりジャジーな雰囲気。結局これが、全体の(とくに前半の)雰囲気を決定づけた感じだった。
本編一曲目は、当然のように新曲「ゴールデンタイム」。ほとんど原曲通りのアレンジ。ハンドクラップに反応できる人が意外と少なかったような。
そのまま「Hey! Space Baby」。これは夏のライジングサンロックフェスティバルでもやっていた。畳みかけるようなスピードで、ノるのが難しい。客を乗せるというよりは、オープニングの勢いをそのままに、という感じ。
ここでMC。25周年記念で初期のアルバムをアナログで復刻して、改めて聴いてみたらなかなか良かった。でもファーストはやっぱり「変態」だった(笑)。という流れでファーストから3曲。
「BODY FRESHER」は納得の選曲。ひとりなので、インディーズ盤のようなアレンジ。
続いて「Blue Talk」。これがまた素晴らしい。ひとりでいながらも、ほぼ完全再現。冒頭のリフを「ベースです」とおどけながら低弦で弾く。それ以上に村山さんのギターフレーズをほとんどきっちりと弾いていたのが素晴らしかった。当時の音楽は、5人(プラス井上富雄)の演奏の成せる業だったはずなのだけれども、それをひとりで再現してしまっていた。去年の「ひとりソウル」の古い曲でも同じような感慨を抱いたのだけれど、今回はさらにそれに磨きがかかっていた。
そして「昔は一番盛り上げるときにやっていた歌」というMC。おお、これは「ORANGE MECHANIC SUICIDE」か!?と勝手に色めきだったが、もう一つのキラーチューン「DARLIN'」だった。
「相当久しぶりにやります」とは言っていたけれど、『風の歌』のツアーではやっていたし、『白熱』前のころにもやっていなかったかな? しかしここで驚いたのは、アレンジと歌詞がインディーズ盤に寄っていた(正確には、ファーストとところどころ混ざっていた)ことだった。後半にブレイクしてから「あーあ、はっきり君の話を覚えている」と歌う、そっちのアレンジ。
この3曲は、ファーストの回顧というよりは、メジャーデビュー前の再現といった感じ。「デビュー25周年」という次元は超えてしまっていて、そのころのライヴは体験するべくもなかった自分にとっては最高の時間だった。
そのままジャズモードで「きりきり舞いのジャズ」。メジャーデビュー前後のオリジナル・ラヴは、あらためてジャズのニュアンスをうまくポップスに組み替えたサウンドだったのだ、と思った。1曲目の「ひとりソウルショウのテーマ」と併せて考えると、今の田島は「自分もそれなりにジャズを演奏できるようになった」という喜びに満ち溢れている感じがした。アルバム『ラヴァーマン』の曲にもその手法が組み込まれているのは言うまでもないが、次のアルバムにまでその余韻は続くのかもしれない。
「髑髏」の前のMCで、「亡くなった友人に捧げて作った」と言っていたのは、個人的には驚きだった。曲を聴けばレクイエムなのはわかるにしても、当時のインタヴューでこのことを言っていた覚えがなかった(ご存知の方は教えてくださるとうれしいです)。曲の背景はほとんど説明しない田島だけに、余計に驚き。
(それだけに今度の『ポップスの作り方』の上梓も驚きなのだけれど、ブログネタに取っといているのでまだ読んでいない。またじっくりと)。
そのあとで「サンシャイン日本海」。「日本海側の街に行った時ばかりやっている気がする」というMCがあったけれど、札幌は日本海側ですよ(笑)。自分もちょうど新潟出身の友人の墓参りに行ったばかりだったので、「髑髏」と合わせてなんだか嬉しかった。
ここで突然企画「田島貴男のポップス講座」。今回はポリリズムの説明。二つの違う拍子を組み合わせて作るリズム。「ヤスタカ君やるねと思った」とお約束のおどけのあとで、オーディエンスを左と右に分けて実演。それぞれに違うリズムを手拍子させる。「今までこれがうまくいったのは新潟だけでしたね」とプレッシャーをかけつつも、今回はなかなかうまくいっていたようで喜んでいた。
そして「次の曲では、スタッフにも誰にも内緒で、スペシャルゲストを呼んでいます。お楽しみに!」と驚かせながら「線と線」。二つのリズムでオーディエンスを分けた後で、またそれを「繋ぐ」というなかなか粋な選曲。
途中リズムをループさせ、「ゲスト」を呼びに裏に引っ込む田島。現れたのは、木根尚登のような大きなサングラスをかけた田島だったものだから、会場大爆笑。無言で謎のポーズを決める。ほんと、ダサすぎてかっこいい(笑)。しばらくステージを縦横に駆け回ると引っ込んで、再び田島が登場。すっかりテンションが上がっていて、ステージの最前列の柵に足をかけてオーディエンスを挑発しまくる。『ビッグクランチ』のころのようなパフォーマンスで、またステージダイブするのか?と思わせるほどだった。
曲後の「スペシャルゲストは"J-SOULブラザー"でした!」というMCに、また会場が大爆笑。なんだかとてもいい感じ。なぜかクールなパブリックイメージがあるのに、実はこういう「馬鹿さ加減」があるところが、田島貴男の素晴らしいところなのだ。
すでに名曲の風格漂う「四季の歌」を朗々と歌い上げると、先日出演したNHK-BS「COVERS Fes」の話。RCサクセションの「スローバラード」と宇多田ヒカルの「Automatic」をカヴァーしたと告げる。昔から大好きだった「スローバラード」は、練習の必要もほとんどなくうまく歌えたと自画自賛するが、「Automatic」はすごく難しかったと告白。
「英語が喋れないところから洋楽好きになった僕たちと、バイリンガルの彼女とでは言葉のリズム感がまったく違う。そういえば、Wikipediaで『英語の講師をしていた』と書かれてますが、アレ誰が書いたんでしょうね? まったくのウソですから」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E5%B3%B6%E8%B2%B4%E7%94%B7
とまた違う驚きのMCを経て、その「Automatic」。キーが違うだけでほぼ原曲通りのアレンジ。田島が歌うとキャンディーズも山口百恵もソウルミュージックになるのだが、これはその正反対。むしろ昭和歌謡になってしまったことに驚いた。田島を含めて我々の世代に刷り込まれている「ブルース」の宿命を感じた。
ただしこれは、忠実に原曲通りのアレンジだったために、余計にそう聞こえたのかもしれない。たとえば「エブリデイ・エブリデイ」のようなテクノアレンジでやってみたら、この曲の先見性や普遍性などを引き出すことが、田島だったらできたかもしれない(残念なことに、最近はアレンジはシンプルな傾向なので、そんなことはやってくれないだろうけれど…)。
新しいスタンダード曲に続けて、自らのスタンダード曲「接吻」。今回は秋向けのしっとりとしたアレンジ。
「フリーライド」は、ドブロギターのボディをパーカッションのように使いながらの激しいアレンジ。途中の掛け合いでは、男と女に分けて掛け合いをさせる。改めて気づいたのだが、今回は男性比率が全体の2割くらい。また減ってきているかな…。
最後に「JJJ」で畳みかけて、最高潮の内に本編終了。
アンコールはほぼいつも通り。「希望のバネ」は、「朝日のあたる道」に匹敵する感動のアルバムラスト曲だと個人的に思っているので、この2曲が連続したのはうれしい。でも残念ながら、最後のリフレインをみんなで歌わせる、というのはなかった。毎回、ちゃんと歌えている人が多くなかったので仕方がないのだけれども、それならいっそ、小沢健二ばりに歌詞をプロジェクターで映せばいいのに。
今回は、販促コーナーをくどいほどやったり、「ポップス講座」だとか、謎の「Jソウルブラザー」だとか、本人も言う通り「グダグダ」な進行で、とてもとても楽しかった。91~2年の渋谷公会堂公演で、「ドリフで回していたから」というだけの理由でアンコールに舞台を回したころのような、最高の「くだらなさ」で溢れていた。